018 ムースポッキー
巷はゴールデンウィーク。

普段はジムにバイトにと忙しい俊も今日は唯一のオフ。
俊と蘭世はおにぎりやお菓子の買いだしで、近くのコンビニに来ていた。



今日の朝のこと・・・・



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「ねえ、真壁くーん、せっかくのゴールデンウィークなんだからさぁ、どこか行こうよ〜。
天気もすっごくいいし、家にいたらもったいないよ。」

蘭世はまだ布団も上でゴロゴロしている俊を揺さぶりながらごねた。



「うるせぇなー、ゴールデンウィークなんてどこ行っても人だらけで余計疲れるって」
俊は目をつぶったままだるそうに答えた。


「もぅ、真壁くんったら!そんなおじさんくさいこと言って・・・
ダメよ!ホラ起きて!
町はきっと込んでるから、ほら、公園にでも行こうよ。
買出しして・・・。家でのんびりするなら、太陽の下でのんびりする方が健康的でしょ?」
蘭世はえいっと俊の抱えている布団をがばっとめくり上げた。

「あ、お前・・・!」
「ほら、いくよ♪」




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その蘭世の無邪気な笑顔についついつられて、俊はやっと重い腰を上げ、
ふらふらとついてきていたのであった。

起き上がるまではだるいのだが、いったん外に出てみるとすがすがしい風に青い空が澄んで見えて
非常に心地いい。
買出しにも意気込みが入る。



「おにぎりとサンドイッチと・・・・お茶と・・・・・・・
で、お菓子だよね。
これとこれと・・・・・・」
蘭世は次々と商品を手にとって、かごに入れていく。


「お前、そんなに食うのかよ。俺は甘いものはそんなに食えねえぞ」
俊はかごいっぱいになっているお菓子の山を見て、あきれながら言った。


「大丈夫よ。それに別に今日だけで食べてしまわなくてもいいじゃない?」
ニコニコしながら蘭世は答える。

「あ、ムースポッキーもいるよね〜〜。これおいしいの〜〜」
蘭世は棚に並ぶムースポッキーを見つけるとすばやく手に取った。

「俺、それいらねえ」
俊はそれを横目で見ながら言った。

「えー、なんでよぉ」

「甘いじゃねえか。買うなら普通のにしろよ」

「いやー、絶対これ!」
蘭世は譲らない。

(こいつ食べ物のことになるとなんでこんな熱心なんだ?)
俊はふと心で思いながら
「む・・・勝手にしろ。俺は普通のを買う・・・」
負けじと自分の意見を通した。

「何よーもぅ、勝手にするもん」

そんなとりとめのない口論を繰り広げながら、買い物を済まし、2人で公園に向かった。





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公園のベンチに座って、軽食を済まし、2人は穏やかな時間をすごしていた。
公園は、カップルや親子連れで、さすがに人が溢れていたが、込み合うということもなく、
誰もがそれぞれ楽しそうにすごしているのをベンチにかけて眺めるのも、
こちらまでほがらかな気分になり、なかなかいいものだ。

時間もゆっくりと流れている気がする。



「はふ・・・」
半強制的に連れて来られた俊も、恵まれた天気に心地よく、
大きく伸びをしてから一つあくびをした。



「ね、真壁くん、外にいる方がずっときもちいいでしょ?」
と蘭世はウィンクしながら言って、はいっとペットボトルに入ったお茶を俊に差し出した。
「おお、まあな・・・・サンキュ」
そういって俊はお茶を受け取り、ごくっと飲み干した。

「こんな風にゆっくりと2人でのんびり過ごすのって久しぶりだよね〜」
蘭世はニコニコしながら言った。




確かにそうだ・・・・
学校が終われば、すぐにボクシングのトレーニングに勤しみ、その後は生活費を稼ぐためのバイト。



淋しい思いをさせていたのかもしれないな・・・・・



俊は隣でうれしそうに笑う蘭世を見て、ふとそう思った。
そんなことは言うこともしぐさを見せることもしないが、こいつのことだ・・・・
ホントは淋しがってるに違いないのに・・・・



このまったりとした何気ない空気でさえも幸せだと感じる蘭世の髪は、
春らしい風に誘われてさらりとなびき、
俊の鼻を、そして胸をもくすぐった。

心がキュッと鳴る。

そして俊の目は、蘭世の透き通った白い肌に奪われたまま離せない。



そのときーーーー、
「・・・・・ねっ!」っといって蘭世が振り返ったので、俊ははっと我に返って、
ぱっと顔をそらした。



「あっ!なぁに?真壁くん、もしかして今私のこと見てた?」
蘭世は大きな目で俊の顔を覗き込んだ。

「んなわけねえだろ」

蘭世のしぐさが色っぽかったのと、突然驚かされたのとで、
胸はドキドキしたままだったが、俊は顔が赤くなりそうなのをかろうじて我慢し、
心を悟られないようにポーカーフェイスのまま悪態をついた。


「なによぉ、フンだ。」
蘭世は意地悪に突き放されても、この空間がよっぽどうれしいのか、、一瞬
わざとらしく頬を膨らませてみたが、またにこっと顔を笑顔に戻した。



俊はつい冷たく言い放ってしまう自分に嫌気がさしながらも、
それでも笑顔を絶やさない蘭世に感謝した。
蘭世の存在に一番支えられているのは、まぎれもなく自分であることにも気づいている。
彼女が笑うことで自分がどんどん癒されていくーーーーー。
優しくしなければと思うのだが、照れが先行して行動に移せない。




「あーーーーー!!!」
突然蘭世はよく通る声で叫んだ。
一人、感慨に耽っていた俊は、その考えの中心にいた人物の叫びだっただけに、
一瞬、びくっとして、蘭世を見た。

「な、なんだよ、今度は。。。びっくりするじゃねえか・・・」
「真壁くーん、見て!これ・・・・」
蘭世は半分泣きそうな顔で、持っていた銀色の袋を差し出した。


ムースポッキーのチョコが熱で溶けて、全てくっついた状態になっていた。


「ぶっ!だからいったんだよ。やめとけって・・・くくく」
先ほどの少ししんみりした思いもふっとんで、俊は口元に手を当てて笑った。
「なによもうーーー!真壁くんのポッキーだってーーー」
蘭世は、俊の選んだポッキーもバリバリと開封して中を見た。

「あ、ほら!これもーーーー!」

「げっ!!!」
俊はそれを箱ごと蘭世の手から取り上げて中を確認すると手を額に当てて
はぁ・・・とため息をついた。


「あはははは〜〜。真壁くん、へこんでるぅ〜」
蘭世はチョコが溶けたのが自分だけじゃなかったことのうれしさと、
あまりへこんだ?ところをみたことのない俊の珍しい姿が可笑しくて
俊を指差して笑った。

「うるせぇ!このやろう・・・」
そういって俊は蘭世の首に腕を回してゆるく締めた。
「きゃー、いた〜い」




春に光に照らされたまま、さわやかな風が吹き抜けた。
熱に溶けたチョコは、さらに2人の熱を感じ溶けていきそうな・・・・・
そんな春のひとときだったーーーーーーーーーーーーー





あとがき

春のとある一日。。。という設定です。
が、ホントどーでもいい話ですよね・・・^^;
登場人物が俊×蘭世じゃなければ、こんなのUPできたものじゃないんですけど・・・・
(無理やり載せてる・・・・・)
せっかくよんでくださったかたホントすみません。

最近、おっきな事件?が思い浮かばなくって、どうしても日常的な話になってしまう。
まあ、短編でいくということにしてるからまあいっか☆(いいのか?本当に・・・)
誰かネタくれないかしら・・・・^^;