036 アンティーク
「よぉ、真壁」
帰宅途中の俊の背後から誰かが声をかけた。
土曜日の放課後。今日は部活も休みだった。



「なんだ。日野か」
俊はチラッと振り向いて声の主を確認するとすぐ、顔の向きを元に戻した。



「お前なあ、・・・俺は仮にも先輩であってだなぁ・・・・」
俊の態度に不平をもらしながら日野は隣に並んだ。
そんなそっけない俊の態度を日野は特にイヤというわけでもない。
むしろ、はねつけられるそんな感じが、妙に心地いい。
男同士・・・・・その響きにはこんなクールさがぴったりあっているような気になる。



「ん?そういえば何か足りないと思ったら江藤がいないんじゃないか。どした?」
いつも蘭世やあるいは曜子に俊の周りの空間は占領されているため、日野が俊の隣に立つことは珍しいことだ。
こちらの方が違和感を感じてしまう。




「居残りだってよ」
俊が興味なさげに答える。
「居残り?なんで?」
「さあな。テストの点がどうだこうだのわめいてたが・・・・」
「ふーん。で・・・、お前待っててやらなくていいの?」
「・・・なんで?(終わったら速攻うちくるだろうし・・・)」
「なんでって・・・お前・・・」
あー、もうっと日野は右手でおでこを抱えながら言った。


「お前らってさー、つきあってるんだろ?終わるのぐらい待っててやればいいのによー。部活もねえのに・・・」
「・・・・・」
(つきあってる?そうか・・・つきあってるのか・・・俺たち・・・)
俊は日野の何気ない質問に一瞬顔を赤らめた。
改めてそう思いなおすと突然こっぱずかしくなる。



そもそもそういう実感を抱く前から常に一緒にいてそれが当たり前だと感じる。
言われてみれば、確かに今の状態を表現するならば「つきあってる」ってことになるのだろうが、実際そう突っ込まれると恥ずかしさでいっぱいになるのだ。

こみ上げてくる自分の感情をコントロールできなくなる。




だからイヤなんだよ!言葉ってのは・・・!!////




しばらく一人で考え込んでしまっていたため、俊は日野が隣でくっくっと声をひたすら押し殺して笑いをこらえているのに気がつくにはしばし時間を費やしてしまった。


「・・・なんだよ」
いつものポ−カーフェイスを慌てて取り戻してじろりと日野を睨みながら俊は言った。
「いや〜、俺さぁ、最近お前って男がわかってきたんだよね・・・」
日野は楽しげに答える。
「何が」
「だってさぁ、・・・お前今、この沈黙の間ずっと江藤のこと考えてたんだろ?」
「・・・・///なっ!?んなことねえよ!!!///」
俊は鋭いところを指摘され、さらに心臓をバクバクさせられているのを悟られないように、
必死で隠そうとする。
「いや!絶対そうだ!ポーカーフェイスを気取っている割には顔が赤らんでるぜ」
日野は人差し指で俊の顔を指差しながら言った。

突然意表を衝かれた俊は思わず口を手で覆った。
そう言われると余計感情が乱される。
一度、感情の均衡がくずれると押さえがきかなくなってしまう。
俊は意識下で押さえろと自分に言い聞かせてみるが焦りでなかなか元に戻せない。
こうなってしまっては俊の強力な魔力をもってしても無理だ。



「ほ〜らほら。真壁くんは照れ屋でしゅねぇ〜〜。そんなに江藤のことが好きでしゅかぁ〜?」
日野の容赦ないからかいに俊はついに爆発する。
「うるせぇ!」




ボコッ!!




言葉と同時に日野の頭にかばんが落ちてきた。。
その場にはもういられなくって、俊はまだ顔を赤らめたまま、頭を抱えている日野を無視して立ち去った。

「ってぇ・・・。ちょっとからかいすぎたか・・・」
小突かれた頭をさすりながら日野は足早に立ち去っていく俊の後姿を見送った。
「古きよき時代の男というか・・・
アンティークものだな。。。。あの照れっぷりは・・・。今の時代なかなかいねえぞ」
以前より近しく感じるようになった俊との距離をなんとなくうれしく思う日野であった。






あとがき

ひさびさの更新だというのに、なんか中途半端な内容で中途半端な終わり方に
なってしまいました。
照れ屋な王子はいかがでしたか?
ていうか王子照れすぎ・・・^^;

「古きよき時代の・・・」は『PRIDE』で木村くんがよく口にしたセリフなんですが、
これを「アンティーク」という言葉をつなげて書こうと思っておりました。
(なんて安直・・・苦笑)

日野くんっていうキャラはすごく好きです。
実際ときめきBOYSがこの世に存在したら一番惹かれるのはきっと日野くんですね。
俊はあくまでも理想像であって、実際は、冷たい男だから、(言いすぎ!)
一目ぼれはしても、すぐ想いは冷めそうですね^^;
まあ俊には蘭世ちゃんがいるしぃ〜。
克にはゆりえがいるけど・・・(T_T)