057   可視光線







久しぶりに鈴世×なるみです。
鈴世が魔界から帰ってきたあとあたり。
ちょっと何かいてるかわかりにくいと思います。スミマセンーー逃









*****     *****     *****








先ほど降ったにわか雨の名残がまだ空気中に残っていて、

ムッとした湿気が体にまとわりつく感じがする。

でも、それでも・・・

二人でこうやって歩きたかった。

離れていた時間を、一分でも一秒でも・・・ほんの一瞬でもいいから埋め尽くしたかったから。





歩いていたら東の空に綺麗な虹がかかっていて、

鈴世くんが黙って私の手を引いて公園に連れて行ってくれた。

そして、少し濡れたベンチをおもむろに取り出したハンカチでさっと拭いて

「どうぞ」と手を差し伸べてくれた。

私が「ありがとう」と微笑んでそのベンチに腰を落とすと

鈴世くんもニコリと微笑み返してくれてそのまま座るとまだ綺麗にかかっている虹に目を向けた。





黙っていた。

ホントは話したいこといっぱいあった。

鈴世くんがいなかった間のこと、もう昨日までにもたくさん話したけど

それでもまだまだ足りなかった。

でも、今は黙ってあの虹とそして夕日にそまる鈴世くんの横顔を見つめていた。

それがなんだか今は心地よかったから・・・。

「きれいになった・・・」なんて鈴世くんは言ってくれたけど、

それは鈴世くんだって同じこと。

鈴世くんはまた背が伸びて、髪も少し伸びて、ぐんと大人っぽくなって・・・

私の心を奪うように惹きつけて、ずっとドキドキし続けたまま。

初めて出会ったあのときから、もう何年も何年も経つのに、未だに初めて恋したみたいに・・・

しゃべり続けたかったのは、そのドキドキを悟られたくなかったから。

いつも私ばっかり余裕がない感じで、ちょっと悔しくて・・・

そんな密かな抵抗も鈴世くんには通用しないことぐらい、100%わかってるけど。。。





そんなとき、鈴世くんが口を開いた。



「虹ってさ・・・」

「え?」

「太陽から地球に光が届いてるって証拠なんだよね」

「光?」

「普段、太陽の光とかってあんまり意識したりしないだろ?

でもさ、雨降ったあととかって空気中に小さな雨粒がたくさん存在して

それに太陽の光が雨粒に入ると、それがプリズムみたいになって光が屈折し反射して

光が分解されてああいう風に7色に見えるわけ」

「へえ〜」

「可視光線っていうんだ」

「かしこうせん?」

「人間の目で見ることができる光のこと。普段は見えてるなんて思ってないけど、

プリズムに通すとみることができる」

「そうなんだ。さすが鈴世くん♪物知りだね〜」

私はいまいちよくわからなったけど、鈴世くんがそんな風にいろいろ教えてくれるのがスキだから

私は一生懸命それを理解しようとした。

鈴世くんは真顔のまま、ずっとその虹を見つめていた。



「太陽の光だって可視光線以外にも紫外線とか赤外線とかあってさ」

「あぁ、そっか。聞いたことある」

鈴世くんはそんな私を見てニコリと微笑んだ。

「それらってのは、可視光線外の波長だから人間の目には見えない。見えるのは可視光線の範囲の部分だけ。

でもそれらだってプリズムとかがなければ目に見えてるなんて思わない。

あっ、実際は見えてるから、太陽光は白く見えるんだけどさ」

「あぁなるほど」





「目に見えるものが全てじゃないんだ。

見た目だけで判断してしまう・・・少し視線をかえるだけで全然違って見えるはずなのに・・・

人間の悪い癖・・・だよね」





「・・・・・・鈴世くん・・・!」



心がズキンと痛んだ。

人間界を追いやられたことを言ってるのかなって思った。

自分たちと少し違うだけで、その人自身がどうこうなんて知りもしないのに

排除しようとする。

彼を傷つけた人間。

そして私も・・・人間。

謝りたいけど、何をどういっていいのかわからなくて、何も言えなかった。

そんな私の気持ちを察してか、鈴世くんはポンポンと私の頭に手を乗せた。



「ごめん・・・非難してるわけじゃないよ。ただそう思っただけなんだ」

そういって鈴世くんは前みたいに屈託のない笑顔で笑う。



鈴世くんが謝ることなんて全然ないのに・・・

私の心に何かがこみ上げてきて涙があふれ出た。

「なるみ?」

鈴世くんは黙って私の肩を抱いてもう一度「なるみ・・・」とだけつぶやいた。



鈴世くんの鼓動だけが聞こえる。

私は鈴世くんが側にいることを、感覚全てで感じたくて、鈴世くんの胸にしがみついた。



「なるみ・・・人間だけじゃない。魔界人だって同じだよ。

人間の温かさだとか、優しさだとか、愛情だとか友情だとか・・・そういったものを理解しようとしない。

違う世界に住むということはそういうことなんだと思う。」

「・・・っく・・・っく」

「でも、僕たちはその異文化を超えて一緒の世界に住んでる。

だから僕たちが両方の良さをわかって、それさえ忘れなければいいと思うんだ。

僕は誰に何を思われても構わない。なるみさえ・・・なるみさえ僕を愛してくれれば・・・」

「・・・鈴世くん」

「僕は・・・なるみを愛してるから・・・」

「わ、私だって・・・」

私は勢いよく顔を上げて鈴世くんをしっかりと見つめる。

言葉にするのは恥ずかしいから・・・しっかり、しっかりと見つめた。

鈴世くんは見つめた私の目をじっと見つめ返してくれた。

そしてくすっと笑って私の涙の跡を親指で拭ってくれた。



「いいの?僕モンスターだけど」

「も、モンスターなんかじゃない。鈴世くんは鈴世くんだもの。

私は私のプリズムで本当の鈴世くんを見てるから」

鈴世くんは口元をほころばせ、そして黙って私をもう一度抱きしめてくれた。



鈴世くんの鼓動がまた聞こえてきた。

すごく早く動いてる感じ。



私が思ってるより、本当はずっと鈴世くんもドキドキしてくれたりしてるのかな。

そう思うと、先ほどまで余裕がないのは私だけなんて考えてたことをちょっと撤回したくなった。



鈴世くんから溢れだす全ての可視光線を、私だけのプリズムで一線ももらさないように

ずっと鈴世くんを見続けようって改めて思ったそんな瞬間だった。











<END>






あとがき

スミマセン・・・先に謝ります。
難しかったんですよ〜〜。ホントマジで。このお題。
可視光線を調べるところから始めましたよ〜。
そこで虹っていうのが出てきたのでコレ使う〜〜〜!ってなったわけですが、、、
伝えたいと思うことをそのまま文にするのって無理!ムリ〜〜〜。
だって漠然と思ってるだけだしさ〜。
もっと練ってから書いたほうがよかったんですが、時間かければかけるほどわけがわかんなくなりそうで
そのまま直打ちしました。
かなり無謀なことを・・・。
しかも、お題「プリズム」ですればよかったと今更思う私・・・。
でももう「プリズム」はとっくに(それも無理やり)消化しちゃってるし・・・。
難しいですね〜。

しかもこんな難しげな理科みたいなのをお勉強の弱い?王子に語らせるわけにもいかず・・・
慣れない鈴なるで・・・ぎゃーーー玉砕まっしぐら
可視光線と虹についての説明もたいして理解してないので苦情はお見捨ておきくださいませ・・・お願いっ!