080 おはよう
肩口に少し肌寒さを感じて蘭世はふと目を覚ました。
瞳をゆっくり開く。
見慣れた自分の部屋の風景ではない。
見慣れない天井、見慣れない窓、見慣れない布団・・・
寝ぼけたまま目だけを動かし辺りを探る。

しばしの観察のあと、はっと思い出して蘭世はすばやく隣を見た。
見慣れた横顔・・・。
何も覆われていない俊の肩が布団から少し出て、呼吸に合わせてゆっくりと動いている。
そうここは俊のアパート。俊の部屋。
隣で眠る俊の姿を見つけて蘭世は急に顔を赤らめた。
昨晩のことを思い出して・・・。




14歳で出会い、恋をし、傷つき・・・想いを通わせた。
そして昨日。
初めて肌を重ねた。

呼び合う声、重なり合う吐息、抱きしめあう心・・・。
どちらからともなくそっと唇をよせ、それは次第に深くなった。
求め合うのに理由などいらなかった。
2人は同時に感じていた。今がその時なのだと・・・。


閉められたカーテンの隙間から朝の光が差し込んでくる。
きらりと輝き蘭世は目を細めた。
今日もどうやら外は晴れているようだ。
(初めて泊まっちゃった・・・)
蘭世は天井を見ながらもう一度昨日のことを思い出した。
いずれは・・・と思っていたが、いざそうなった今
顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなる。
自分の行為があれでよかったのか、
どこも可笑しくなかったか。
初めてだけにわからないことだらけで・・・。
だけど俊は優しかった。
それだけはわかる。

(私たちやっとひとつになれたんだよね・・・)
感動というのだろうか・・・そんな感情が胸の中にこみ上げる。
蘭世は眠っている背中に向かって心でそうつぶやいた。
その瞬間眠っていたと思っていた背中が急に寝返りを打って俊の顔がこちら側を向いた。
(うわっ、アップ。・・・びっくりしたぁ・・・)
いつもの鋭い瞳が今日はまるで子供みたいに閉じている。
優しそうな目、長い睫毛。
蘭世はそっとその睫毛に触れたくなる。

白くて長い指に睫毛を触れられた俊は、きゅっと目を顰めてからそっと瞳を開けた。
(あっ起こしちゃった?)
2人の目が合う。

「あっ・・・え、とう・・・?」
「お、おはよう・・・真壁くん・・・」
「・・・・・・」
しばしの沈黙のあと、ようやく思考力が戻ってきた俊はみるみる顔を赤らめた。
「お、おぅ・・・」
どうやら昨日のことを思い出したようだ。
(ん?真壁くんも、もしかして・・・照れてる??)
蘭世は無意識に大きな瞳をじっと俊に向けた。
見つめられた俊はさらに顔を赤くさせる。
(何だよ、このヤロー。そんな潤ませた瞳で見るな///!)
いたたまれなくなって俊はばっと蘭世を抱き寄せた。
「照れてる・・・?」
「うるせえ」


まだ時間は早い。
俊は蘭世を腕に抱えたまま布団を顔まで引き寄せ
同じシャンプーの香りがする長い髪に顔をうずめてもう一度瞳を閉じた。



あとがき

書いてるこっちが照れてしまいました。
初めての朝ってやつです。
う〜ん、ありきたり・・・。
表現力とぼしいなあ・・・。

初めての朝ってやつ・・・皆さんは覚えていらっしゃるのでしょうか。
ちなみに私はまったく覚えていないです(←変な暴露)
初めての時ってのもあんまり覚えてない(^^;(←こんなの書いていいのかい?)
初KISSとかの方が覚えてますね。当時の意識の持ちようの違いかな。