「へえ、もうすぐ蘭世誕生日なんだ〜。」
「てことはその日はデート?」
「え、ま、まさか〜」
「えー、だってねえ・・・」
「真壁くん、きっとバイトだし、覚えてすらないかも・・・」

お昼休み、
教室で恋愛話に花を咲かせているよくみる光景。
今日はそこに蘭世も交じっていた。
「あ〜、でも真壁くんならありうるね。」
(ぐっ・・・)
「そういうの、興味なさそう」
(ぐぐっ)
「あっ、でもつきあってるんじゃないの?」
「えっ!?」
周りの3人が同時にじっと蘭世を見る。
男子の少ないこの学園では蘭世と俊の関係を誰もが注目している。
「えっ・・・あの、その・・・つきあってるというか・・・」
「誰が付き合ってるって〜〜〜!!?」
そこに現れたのが天敵(ライバル)の曜子。
「か、神谷さん」
「俊と蘭世がつきあってるわけないでしょうがー。ふふん。俊は私んちに婿養子に来るって子供の頃から
決まってるのよ。」
曜子がまくし立てる。
「真壁くんにはそんな気はありませんー!」
蘭世も負けじと言い返し、二人のいつも通りの戦いがはじまった。
周りにいた3人はあぜんとして、二人の行く末を見つめる。
かみつかれた蘭世が逃げ出し、曜子がそれを追いかけるという形で二人は教室から出て行き、あたりは通常の
静けさに戻った。
「あの二人っていつまで続くのかしらね・・・あの関係」
「さあ・・・」
「でも真壁くんって蘭世のこと好きなんじゃないのかしら?」
「「「う〜〜ん」」」
残された3人はそろって腕を組み考え込む。確証がない分、これという意見が出せない。
「そうだ!」
そのうちの一人がぽんと手を打った。
「蘭世がうまく誕生日に真壁くんと過ごせるかどうかかけない?」
「あっ、それおもしろそう〜♪」
「でも、いいのかしら・・・。そんなこと賭けにして・・・」
「大丈夫よ。3人の秘密ってことで」
「そう〜っとね♪」
3人はウインクを交わした。

日は次第に過ぎ、蘭世の誕生日の当日がやってきた。
蘭世はいつにもまして深いため息をつく。
今日は土曜日、学校も休み。
結局蘭世は俊に誕生日のことを何も伝えられずにいた。
「真壁くん、バイトだっていってたしなあ・・・」
はぁともう一つため息をついて、蘭世はベッドにうつ伏した。
(つまんない・・・)
仰向けになって俊の顔を思い浮かべる。
(やっぱり真壁くんにとったら、私の誕生日なんてとるに足りないものなんだろうな・・・)
「寂しい・・・」
つつと涙がこぼれる。
「ああ、もう!暗いぞ!蘭世。そうだ、気分転換に映画でも見に行こう!今日、封切りのがあったんだ。よし!」
急いで準備をしてとたたたたと階段を下りた。
「でかけてきま〜す」
と一声かけて、いきおいよくドアをあけたとたん突然の来客とぶつかった。
「うわっ!」
「きゃ・・・ご、ごめんなさ・・・あっ、真壁くん!」
蘭世が顔を上げた先には思い人の姿があった。
(真壁くんが、来てくれた〜〜〜〜)
俊も突然扉が開いたことに驚き、目をぱちくりさせながら言った。
「よ、よぉ。びっくりさせるなよ」
「あはは、ごめんなさい・・・バイトじゃなかったの?」
「ああ、午前中だけな。どうしても抜けらんなくって」
「えっ?」
「・・・何だよ。誰かさんの誕生日だろ?今日は」
「お、覚えててくれたの?」
「ま、まあな///」
(数日前からどでかい声が聞こえてたなんていえねえな・・・これは)
ポリポリと鼻をかきながら俊は答えた。
「うれしーーー。真壁くんが覚えててくれたなんて〜〜〜〜♪」
「お、おう。ってお前、その当人がどこか行くのか?すごい勢いで出てきたけど・・・」
「あっ、いや、暇だから、映画でもみようかな〜〜〜と・・・」
(さっきまで泣きべそかいてたなんて言わないぞ・・・)
バッチリ聞いてた俊はくっと笑った。
「暇?」
「そ、そうよ」
「ふ〜ん。まあいいさ。おつきあいしますよ。お嬢さん」
「えっ?いいの?」
「ああ」
俊はにこっと微笑んだ。

「ねえ、蘭世の誕生日って今日だったよね。どうなったかな、あの二人」
「昨日、蘭世ったらすっごく暗い顔して帰ってったわよね」
「やっぱり誘ってもらえなかったのかな〜」
「「「う〜〜ん」」」
例の3人の女たちは喫茶店でお茶をしながら先日のかけについて話していた。
「賭けたはいいけど、蘭世にどうだったか聞くのってこわくない?」
「デートしてなかったときは酷な質問よね・・・」
「そうねえ」
「「「・・・。」」」
3人がそれぞれ自己嫌悪に落ちていく。
「やっぱやめよっか〜。」
「そうよね。蘭世に悪いわ。こんなの」
「うん」
3人の意見がまとまったそのとき、一人が窓の外を見て、とたんに叫んだ。
「あ〜、蘭世!」
残りの二人もつられて見る。
「・・・真壁くん!!」
3人の視線の先には仲良く腕を組む二人の姿があった。
「やだ?何?」
「ラブラブじゃない?」
「やっぱりつきあってたんだ。あの二人・・・」
「でもなんだかお似合いよね・・・」
「うん・・・」
「うん・・・」
3人はうなづき合う。入り込めない空気が二人の間に流れているのが遠目でもわかる。
「いいな、あんな二人。憧れちゃうな・・・」
「ほんと、ほんと。私も彼氏ほしい〜」
「・・・がんばりますか・・・」
3人は水の入ったグラスを傾けてチンと鳴らし、ほほえみ合った。
次の日、蘭世はこの3人に冷やかしと質問攻めと、噂を聞いた曜子の攻撃をくらうことになる・・・



あとがき

二人のことをかけにつかうなんてバカバカバカと自分を責めながら書いてました。。。(笑)
まあ、自分の中では二人はデートを絶対するようになってるんだから、
賭けにはならないんですけど・・・^^;

もし、同じ学校に二人がいたら、絶対入り込めない雰囲気がわかるだろうなと思います。
出てくる3人の姿は私が重なっています。
憧れちゃうな・・・ていうのは私の代弁ですね。。。^^










098 賭け