082 赤い糸
「はあ?赤い糸だぁ?」
「そう、赤い糸、お兄ちゃん信じる?」
珍しく鈴世と帰りが一緒になったときのことだった。
ランドセルを揺らしながら鈴世は聞いてくる。
「お兄ちゃん達見てると赤い糸ってあるな〜って信じる気になっちゃうよね」
「”お兄ちゃんたち”って・・・」
「実際、お兄ちゃんはどう考えてるのかなあって思ってさ」
ウインクしながら鈴世は言う。
相変わらずこいつ、ガキのくせにませたこと言うな・・・。こっちが照れるじゃねえか。
「・・・俺はそんなもの信じねえよ」
「えー、何でー?あっ、そっか。わかりきってることだから敢えて考える必要もないんだね」
「あのな〜・・・そういうことじゃなくて・・・」
うんうんと鈴世は頷いている。
「・・・お前は信じてるのか?その・・・赤い糸ってやつを」
信じてるだろうけど、話を自分からそらすために鈴世に振ってみる。
「あったりまえだよ〜。ぼくはなるみちゃんとつながってるもんね〜。ぼくにはわかるんだ♪」
だろうな。そう言うと思ったよ。魔界人と人間だけどな・・・だが敢えてそんなことは言わない。こいつらは確かに二人でずっと生きていく絆みたいなものを感じる。それが赤い糸ってやつなのか?俺にはわからねぇ
「まっ、なんだっていいけどよ、お前らほんと姉弟そろってロマンあふれてんな。感心するぜ」
「ふっふっふ〜だ。お兄ちゃん達にだって負けないよ。ぼくとなるみちゃんは。じゃあね〜」
ニッと笑って鈴世は江藤家の方へ角を曲がっていった。


ゆっくり俺はアパートに向かう。
赤い糸か・・・。
そんなもの、考えもしなかったけど・・・。
昔は女なんてめんどくさくて、そんなのどうだってよくて、自分だけで精一杯だった俺が、今では命に代えても守りたいやつがいる。
そいつは出会った時から俺の心にまっすぐ飛び込んできた。
女なんてうっとうしかっただけなのに何故なんだろう。
あいつと出会って俺は変わった。あいつに変えられた?
切ろうとしても切れなかった、切ろうとしたから傷つけた、切れないから離れられなかった・・・
無駄に傷つけただけだった。
そして今も俺のそばにいる。
赤い糸はやっぱりあるのか?
運命なんて口にするのも恥ずかしいし、生まれ変わりなんて話ばかげてる。俺は俺だ。
この俺が赤い糸を信じるだって?ガラじゃねえ。
だけど・・・。
あいつと出会っていろんなことがあって、ここまで来て振り返ってみたら、信じずにはいられない。
あいつを幸せにするために俺はあいつと出会った。あいつと出会うために生まれてきた・・・。
そう思ってもいいんじゃないかと最近感じる。
俺はやっぱり変わったな。
・・・・蘭世・・・・。
心の中で何度もそう呼ぶ。
実際にはまだ呼べない。こっぱずかしい。
だけど・・・。
俺の魂はその名前を呼ぶために俺は何千年も前から生き続けている気がする。
そしてあいつも。俺と出会うために。。。
赤い糸なんてくそくらえだ。
でもつながっている何かはきっとある。
そうだよな。江藤・・・。



あとがき

なんと女々しい真壁くんなんでしょう。またまた疑問を覚えながら書いてました。(^^;)
赤い糸ってラブなテーマ過ぎて書きにくかったんですけど俊の一人称で書いてみました。
蘭世が主になると当たり前になってしまいますし・・・(汗)
でも、俊って口数が少ない分、頭の中でいろんなことを考えているんじゃないかなと
思っています。
それを敢えて口にしないだけで。(口にできないというか・・・)
自分が赤い糸の伝説を信じるようなロマンチストであることが許せない・・・だけど、信じずにはいられないほどの蘭世に対する想いの深さに気づいた自分もいる。。。
そういう心の葛藤って特に硬派な男性にはあったりするのかな〜と思いました。