088 等高線   〜Syun's heart 2〜
人間としての人生をもう一度俺は歩み始めた。







まだまだ仮ではあるが、ボクシング部の設立も認められ、
思いっきりそれに打ち込むことができる。













俺はそう。。。。。
何かに打ち込んでいたかったのかもしれない・・・・・













カルロ宅に江藤たちがきてから、そのままつい俺はこちらにもどってきてしまったが、
俺の中では答えはまだ見つかってはいなかった。






ずっと求めていた女が目の前に現れた。
俺はただ、素直にそれがうれしかった。
魔界人のままでいたことも俺をほっとさせた。



久しぶりに俺の腕の中で泣いたあいつは、
雪の中で抱きしめた時と同じ香りがして俺の胸を締め付けた。











思わず声に出して読んでしまった名前・・・・・・・・・・・・・・・。










普段ならぐっと飲み込めるはずの俺が、
あの時だけは奥からこみ上げてくる思いを
もうどこにも封じ込めることが出来ずに
再確認した愛とともに体の外に出した。













だが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









落ち着いて生活するようになって、俺はやはり考えずにはいられなかった。





人間と魔界人という関係を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


同じ高さに
同じ位置に
もういられない・・・・・。








どうしても埋められない溝。

今はいい。同じ時間を共有できる今は・・・。
だが、この先、年を追われるにつれて
幾度となく、必ずぶち当たる壁・・・・・・。







あいつなら、そんなに深く考えることもなく俺に付いてくるだろう。
愛の中で生きられるあいつはなら。
俺への想いを何よりも優先させて、人間になることを厭わない。













だが、俺は違う。
俺にはそうさせる権利なんてどこにもないのだ。
ふりかかる責任を受け入れる余裕すら、持ち合わせているのかどうか、わからないでいた。




あいつと生きていくということは、あいつの家族との決別を意味する。
親父さんもお袋さんも鈴世も、皆を悲しませることに
俺は耐えられる自信がないのだ。

彼らたちは、江藤が強く望めば、人間になることすら許すだろう。
だが、その悲しい笑顔を俺はそのまま受け入れられるのか・・・?















それならいっそのこと、
あいつはあいつをもっと幸せにしてくれるつりあったヤツのもとに行った方がずっと幸せなんじゃないだろうか。
同じ高さに立つことが出来る
そういうヤツと・・・・。



将来の行く先もつかめない俺に
家族を捨てて付いてくる義理はない。





気まぐれな男と思ってくれていい。
非情な男とけなしてくれていい。



だが、俺は
やはりこうすることしかできない。
俺はお前に見合うほどの価値なんてもうないんだから。











かけよって一緒に勝利を祝ってくれたあの抱擁を
俺は胸に刻みつけて生きて行こうと思う。

許してくれとは言わない。
伝わらなくてもいい。
だだ、俺にできる最後の愛情表現はもうこうすることぐらいしか思いつかないんだ・・・・・・。














さよなら、江藤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さよなら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・蘭世!












ふと声に出した名前は
俺の体の中を一周回って、もう一度胸に戻ってきた。
俺の心を刺すために。














体が震える。
こんなにも愛している。
だが、俺はもう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

一筋の涙が不覚にも俺の目から溢れた。
声を殺して、
静かに、
ただ、今のこの空間だけ、
最後の想いを流すために。







らしくない自分に苦笑しながら、
俺は部屋を出た。

新月の暗闇が
俺の真意を隠してくれる。
隠して、閉じ込めて、
俺は江藤の部屋に向かった。。。。。。。。。。。。。













あとがき

想いをツラツラと書いていたら、詩状態になってしまいました。
短いし〜。
ポエマーkauranに変化!!!
あ〜、ごめんなさい・・・・。こんな低レベルで。深々と謝!
ちゃんと小説を書けって感じですが・・・。

予告どおりのくら〜い展開です。
こうなったら根暗王子街道を突っ走りますぞ〜。(開き直り)







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このお話は、
「088 等高線」、「095 プリズム」
とともに3部作になっております。

前作にあたる「ラビリンス」をまだお読みでない方は
お時間がございましたら、そちらからまずお読みくださる方が
気持ちをあわせやすいかと思います。
もちろん、全くの続き物ではないので、別のお話として独立して
読んでいただいてもOKです。