091 神社
大晦日の夜も更けて日付が、そして新たな年が明けようとしている。
それほど大きくもなく、
普段なら今頃はひっそりと静まり返っているはずのこの小さな町神社も
今夜はさすがに出店まで出て大勢の人でにぎわいを見せていた。

江藤家も例外ではなくこの人ごみの中に交じっていた。
特に父、望里は先日までのキリストムードから解放され
足取りも軽く先頭を進んでいた。

「初詣っていうだけで何だか身が引き締まる気分になるわね」
椎羅が言った。
「ああ、そうだな。一家そろって年越しに神社に参詣するのは心が洗われるよ」
望里が微笑んで答える。

大きな注連縄をくぐっていく。
俊も蘭世に引っ張り出され江藤家一行に同行していた。
「初詣ねえ・・・・・・」
マフラーを口で半分さえぎられながら俊がつぶやいた。
「お前んちってつくづく魔界人らしくねえのな」
「えー、そうかなー?・・・そうかも・・」
そもそも魔界には神社なんてない。
人間界、しかも日本に暮らしているのだから違和感もないといえばないが、
立派な洋館に住んでいて、その上で魔界人であることを思い出すと妙に
ちぐはぐな気がして、俊は時折おかしくなる。
まあ、いっても自分も魔界の王子という、ここではありえない存在だったりするわけだが・・・

「真壁くんは何お願いする?」
蘭世が大きな目をきらきら輝かせて俊に尋ねた。
「別に」
「んもう!だめよ。真壁くん!そんなんじゃ・・・しっかりお願いすれば叶うんだから」
蘭世が大真面目に答えるので俊はまたおかしくなる。
「はいはい。そういうお前は?」
俊は蘭世に問い返した。
「え?わ、私は・・・」
(真壁くんが早くプロポーズしてくれますように・・・きゃー、いっちゃった///
だけどこれは贅沢ってもんだわ。それか、これからもずっと一緒にいれますようにとか?
う〜んでも恥ずかしくっていえな〜い///。あっでも現実的にちゃんと卒業できますように
にしておいたほうがいいかも。。。う〜んう〜ん・・・)
「私は・・・ま、真壁くんが・・・早く・・・チ、チャンピオンになれますようにかな?」
えへへと笑って蘭世は答えた。
(全部聞こえてるっつうの)
ついつい読んでしまう蘭世の心に照れながらも俊は無関心なフリをして言った。
「そりゃどうも」
「あー、信じてない?本当よ」
蘭世がプウとふくれて抗議する。
「いや、そう願ってくれるのはありがたいけどよ、
10円しか賽銭入れねえんなら、考えてるの全部は欲張りってもんだぜ」
ニヤリとして俊は答えた。
「えっ!?あー、また読んだのね〜!バカバカバカ!もう!真壁くんがもう心を読まないようにに
変更するもん!」
蘭世は俊の背中をバシバシ叩きながら言った。
「いてえな。じゃあ俺はお前が思考を閉じれるまで成長してくれますようににすっかな」
「もうーーーー!!」

「蘭世ったら何騒いでるのかしら?」
椎羅は呆れ顔で振り向いて言った。
「ああ、でも来年は一緒に来る人数も減ってるかもしれんな」
望里は少し寂しげに微笑みながら言った。
「そうね。でももしかしたら増えてるかもしれないよ。おちびちゃんとか」
鈴世はウィンクして言った。
「ふっ、そのときは私たちはおじいちゃんとおばあちゃんか・・・
まあそれもいいかな」
元旦の夜は更けていく。
それぞれの近い未来をうつしながら・・・・・・。



あとがき

あんまり甘くないですね。
いじわる王子。。。もkauranは好きです。
(まあ、どんなのでも好きなんですが・・・^^;)
巷ではクリスマスなのに早々と正月の話なんか書いちゃってます。
みなさんは元旦の夜とか、初詣いかれますか?
kauranはあまり行かないです。
とりあえず寝てからお昼間に行くことが多いですね。
寒い&眠いから・・
(ただのぐうたらという噂もある・・・^^;)