かくしごと
注:このお話は原作から大きくかけ離れています。
苦情はお受けできませんのでご了承くださった上でお読みくださいませ。
設定は、俊が王子に生まれ変わる直前に
蘭世が俊の夢に入った時のお話。
原作ではその後俊は赤ちゃんになってしまいますが
この作品では生まれ変わらずに人間のままです。
第3話
廊下の角を曲がる蘭世の姿が視界に入った俊はその後を全速力で追いかけた。
江藤蘭世には何かある。
それは俊の直感だ。
本当はずっとどこかにひっかかっていたことだった。
だが、決定的な何かがあったわけではなく、なんとなくなんとなくで。
しかし、このまま追い詰めることがいいのかどうなのか俊自身もわからずにいた。
蘭世の先ほどの青ざめた表情。
それは明らかに「何か」を隠しているのがわかるのだが、
その「何か」はたぶん自分が考える以上に切実でもっと深いもののような気がした。
隠し事を無理に暴くことが、いい結果を生むとは到底考えられない・・・そんな表情。
それも直感としてわかっているのに、
俊は追いかけるその足を止めることができなかった。
追い詰めたいのではない。
秘密を暴きたいのではない。
・
・
・
・・・ではなんなのか・・・?
屋上に向かう階段を駆け上がる蘭世を俊は追いかけた。
逃げる蘭世。
それを追う俊。
捕まえて・・・どうする。
わからねえ・・・
でも・・・でも・・・・・・
ほっとけるわけねえだろ!
蘭世が屋上に出る扉を閉めかけようとするのを俊は寸でのところで遮った。
そして自分も屋上に出ると扉を後ろ手に閉める。
蘭世は小刻みに震えながら、目には涙が浮かんで今にもあふれ出しそうだ。
泣かせたかったわけじゃなくて・・・
ただ、わからないことが多すぎるんだ。
昨日の夢。
コイツのこの行動。
そして、自分の気持ち・・・。
「ふう・・・」
俊は大きく息を一つ吐いた。
「お前・・・早すぎ・・・」
蘭世は何も言わずに俯いたままで。
その姿を見て俊もまた俯いた。
「全てを聞こうとは思わねえけど・・・」
俊はそういって切り出した。
「何か事情があるんだろうし」
蘭世は「うっく・・・うっく・・・」とすでに泣き出してしまっている。
「なあ・・・江藤・・・?お前・・・」
「・・・ごめんなさい・・・何も・・・何も聞かないで・・・でないと私・・・」
「・・・」
「・・・ここに・・・いられなくなる・・・」
いられなくなる・・・・?
「何だよ・・・それ・・・」
「ごめんなさい。ホントにごめんなさい。私が悪いの。全て私が悪いんです。
でも、忘れて。夢のことも。・・・全部・・・」
忘れろ?・・・そんなこと・・・
「忘れられるわけねえだろっ!」
「っ!」
蘭世が俊の大きな声にビクッと肩を震わせて俊を見る。
「勝手なこといいやがって。何がどうなってんのか知らねえけどな、
どうやってお前があの夢に関与してんのか、全くわかんねえけどな、
あれは・・・あれは・・・お前の本心なんだろ!
だったら・・・だったらそれでいいじゃねえか。バカ」
「ま・・・まかべくん・・・」
「今更、そんなこと言われたって、はいわかりましたって頷けるほど、
俺はそこまでできた人間じゃねえんだよ!」
「でも・・・私・・・私は・・・」
「・・・・モンスターだっていうのか?」
「・・・・・!!」
「・・・・」
視線が絡み合う。
昨日の夢で蘭世が言っていた言葉。
その姿を俊は脳裏に思い出していた。
俊は蘭世の瞳を覗き込んだ。
大きな瞳。
その中に吸い込まれそうになる。
昨日と同じ顔で、同じ涙を流して・・・
俊はその細い腕をバッと引き寄せてそして自分の胸の中に収めた。
長い髪がふわりと風に揺れる。
なんでそうしてしまったのかはわからない。
これが正しい答えだとも思っていない。
でも、
そうするしかなかった。
いや、
たぶん、
そうしたかっただけなのかもしれない。
そしてそっと蘭世の顎に手をかけて顔を上に向かせるとその小さく赤い唇にそっと自分のを落とした。
昨日よりも・・・
長く・・・・・・・・
今度は・・・
現実・・・・・
そしてゆっくりと唇を離すと俊はもう一度自分の胸に蘭世を抱き寄せた。
「お前・・・おかしいぞ・・・」
夢の中でも言った言葉。
そう。
それでいいさ。
夢でも現実でもいい。
お前はお前で。。。
それでいい。
蘭世ははっと俊の顔を見る。
しかし、俊の表情は見えない。
でも背中に回された力が少し強くなったのを蘭世は感じた。
蘭世はあふれる涙を止めることができずに俊の腕にしがみついていた。
***** ***** *****
「どうすっかな〜・・・・」
蘭世がようやく泣き止んできたのを見て俊はそう言った。
蘭世が腕から抜けようとするので、俊はそっと回していた腕を外す。
「あ・・・あの・・・真壁くん・・・私・・・あの夢なんだけど・・・」
「あ〜夢?なんだっけ?忘れた」
蘭世は俊の顔を見上げる。
「夢のことは・・・な」
俊はそういってニヤリと笑うとポンポンと蘭世の頭に手を乗せた。
「あ〜授業めんどくせえ・・・1時間ここでフケるか?」
そういって微笑む俊に蘭世はまた一筋涙を流したが、
さっと涙を拭いて笑顔に戻すと、蘭世は「うん♪」と大きく頷いた。
〈END〉
あとがき
すみませんでしたーーーー!!!
お茶会イベントで、途中まで読んでいただいていた方々、どうもお待たせいたしました!
ようやく書き上げましたデス。
もっと早くに手をつけていたら期間中にできてた分量なんですがね・・・ごめんなさいっ!
待たせた挙句にこの中途半端な終わらせ方もいかがなものかと
思ったんですが、書き出したらめちゃめちゃ長くなりそうでしたので
すばやくまとめてしまいました。
終わり方・・・めっちゃ悩んだんですけど・・・
どうやってこの場面からアウトさせようか・・・
そしてアウトさせれなかったという・・・^^;
またちょっとあま〜くなってしまいましたが
お気に入りいただけると嬉しいです☆
原作からは離れてますが・・・
読んでいただきましてどうもありがとうございました☆
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