(さっ、真壁くんの顔を見にいこ♪)
昼休み。。。少しでも離れているのがさみしい。
(何で真壁くんと同じクラスじゃないのよぉ〜)
思い立ったら即行動。蘭世は俊のクラスを目指して駆け出す。

俊の教室に近づいたとき、入り口にいた女生徒がちょうどタイミング良く言葉を発した。
「真壁くぅ〜ん」
蘭世はドキリとして立ち止まる。
(えっ!?)
蘭世は思わず廊下の柱の影に隠れた。
(やだ、私ったら何で隠れるの?出て行けばいいじゃない・・・でも・・出て行ってなんて言うの?何が言えるの?)
そっとのぞくと俊とその女生徒が入り口のところで話している。
蘭世にはやたらと二人が楽しそうに見えた。
(あの子誰なんだろ?真壁くんが知らない子と話してるのってそういえばはじめて見るかも・・・)
蘭世の胸がチクリと痛む。
二人の話がおわったようでその女生徒がじゃあと手を振って入り口から離れる。
(あっ。こっちにきちゃう)
蘭世はそそくさとその場から離れた。
(はぁ・・・。いやだな・・・こんな気持ち・・・ただ話してただけなのに。こんなに?私って独占欲強かったっけ?
真壁くんのことは信じているけど・・・私、好きって言ってもらったことない・・・。私たちって付き合ってるのかな?)
悲しい気持ちがどんどんふくらんでいく。

放課後。
今日は部活もない。
さっきからのもやもやした気持ちを押さえながら蘭世は考える。
(そうだ!気分はらしに、真壁くん誘って買い物にでも行こう!お昼間のこともさらっと聞いちゃったりして・・・よし!)
再び蘭世は俊のクラスに向かう。

「あっ、真壁くん。帰ろ♪今日さ・・・」
「・・・悪い、江藤。ちょっと用があるんだ。先に帰ってくれ・・・」
俊が蘭世の言葉をさえぎって言った。
(え!?)
じゃあなと言って俊は教室を出て行く。
「あ・・・真壁・・・くん。・・・行っちゃった」
(あ〜あ。また気分が沈んじゃった。しょうがないな。帰ろっかな・・・)
歩き出した蘭世はふと思い出す。
(あ・・・本返さなきゃいけなかったんだ)
振り返って廊下を歩き出した。

思い気分を引きずりながら、図書室に向かって蘭世は歩いていく。
(こら、らしくないぞ!蘭世!)
自分自身で励ましながらこつんと頭をこづいた。
そして、何げにふと横向いた廊下のさきに人影を見る。
蘭世の目に飛び込んできたのは・・・・

さっきの女の子が男性の胸に顔を埋めている。そしてその男性は・・・・

(真壁くんっ!!)
ショックのあまり言葉が出ない。
(何?どうして?どういうこと?)
はっと俊が蘭世の気配に気づいた。
一瞬目が合う。
何も言えない・・・。蘭世は少し後ずさりしてその場から走り去った。
「江藤っ!!」
俊が蘭世を追いかけようと女の方を押し戻す。
だが女は俊の腕をきつくつかんだ。
「行かないで!今だけでいい・・・。ここにいて・・・」
強いまなざしに俊はひるんだ。

どうやって帰ってきたのかは覚えていない。
我に返ったとき、蘭世は自分のベッドにうつぶせになって声を殺して泣いていた。
(あれは何?何だったの?)
わけのわからないいまま泣き続けるしかなかった。
「蘭世?」
椎羅がドアの外から声をかける。
「真壁くんが来ているけど。。。」
(真壁くん・・・今会っても私、何も言えないし、何も聞きたくない・・・)
「・・・いないって言って」
「・・・。」
椎羅はため息をついて階下に降りていった。

次の日、ためらいながらも蘭世は学校に向かう。
俊の姿を無意識に探してしまう、だが後ろ姿をみかけたとたん逃げてしまう自分がいた。悲しい・・・。
(逃げたって真壁くんにはきっと気づかれてしまうけど・・・)
蘭世は悲しく笑う。
沈んだ気持ちを奮い立たせて一日を過ごした。

授業も一通り終わってみんな帰る準備を始めた。
せめて真壁くんに会う前に帰ってしまおう!
急いで帰り支度を始めた蘭世にクラスメートが声をかけた。
「蘭世〜、おきゃくさまみたいよ」
(えっ?まさか真壁くんじゃ・・・)
「だ、だれ・・・?」
「さあ?女の子だけど」
蘭世が廊下に出ると、昨日、俊と一緒にいた女生徒だった。
「江藤さん、少しお話しできないかしら。。。」
蘭世は少しためらったが、黙ってうなずいた。

二人は屋上に出た。
しばしの沈黙を破ったのは彼女の方だった。
「昨日のこと・・・」
「・・・・!!」
「ごめんなさいね」
「えっ?」
「真壁くん、あなたを追っかけようとしてた。・・・でもあたしが引き留めたの。ここにいてって」
「・・・・」
「真壁くんが好きなの。あなたのこと知ってたわ。いつも彼のそばにいて。でもあきらめられなかった。好きになってしまったんだもの。昨日、告白したわ。」
「告白・・・。」
蘭世の顔から血の気が引く。
「クスクス。そんな死にそうな顔しないでよ。大丈夫よ、はっきりとふられたわ。」
「ふられた?」
「あなたたちって、四六時中一緒にいる訳じゃないし、ほらカールの髪の女の子もよく一緒にいるじゃない?
ほんとに付き合ってるのかどうかもよくわからなかったし。あなたになら勝てそうな気がしたし・・・」
勝ち気な笑みでその女生徒は蘭世を見る。
「だから告白したの。でもふられちゃったわ。あなたのこと聞いてみた。。。」
「・・・」
(真壁くん、なんて言ったの?)
「あなたはどうなの?」
「えっ?」
「彼と付き合ってるって言う自覚あるの?」
「付き合ってるっていうか・・・」
「・・・」
「・・・わ、私たちはもっと深いところでつながってるの。そんな簡単な関係じゃないわ!」
(わ、わわわわ、言っちゃった・・・。///でも、でもそう信じてるもん!)
思いがけない蘭世の強い口調にその女生徒も当の蘭世も驚いた。
「・・・そう」
「・・・そ、そうよ。だから真壁くんは誰にも渡せないわ!」
今度は蘭世もひるむことなくゆっくりと女生徒の目を見て言った。
「・・・同じようなこと言うのね・・・」
「・・・えっ?」
「真壁くんにあなたと付き合ってるのかって聞いた。そしたら、彼・・・」

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俺にはあいつしかいねえし、あいつにも俺しかいねえんだ。。。

その関係は崩れないの?時間をかければ私だって。。。

無理だよ・・・。

すごい自信ね・・・。

それだけいろんな壁を乗り越えたってことさ。

そう・・・。

だから、すまねえがあんたの気持ちには答えられない。。。。。

彼女のこと愛してるのね。

・・・。

違う?

たぶん、そういうことなんだろうな。この気持ちは。でも・・・好きとか嫌いとか、愛してるとか愛してないとか、
付き合うとか付き合わないとか、、、そんな簡単な関係じゃない。そんな簡単に片づけたくないんだ・・・。

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「あなたたちの間にどれほどの絆があるのか知らないけど、屈辱だわ。私、今まで振られたことなかったのよ」
「ご、ごめんなさい・・・」
「くすっ、なんであなたが謝るのよ。・・・まあいいわ。あなたのさっきの瞳をみたら何も言えなくなっちゃった。
ほんとは宣戦布告しようと思ってたんだけど・・・」
「えっ!!」
「あなた、ほんとに表情がコロコロ変わるのね。おもしろい人。そうやって彼の心をつかんでるのかしらね」
「/////」
「お幸せに・・・なんて言えるほど私は心広くないから、このまま行くわ。じゃ」
そういって女はその夕暮れの太陽の光を背にして立ち去った。


はあぁぁぁぁ。
蘭世は深いため息をついた。
「緊張した・・・」
(でも、よかった・・・)
たたたと足取り軽く階段を下りていく。鞄を取りに教室に戻ると教室には誰もいなかった。
ただ一人を除いては・・・。
「真壁くん!」
窓の外を見ていた俊が振り向いた。
「よぉ。」
蘭世の目からはらはらと涙がこぼれた。
「あ、や、やだな。目にゴミが・・・」
俊は蘭世に近寄り、涙のこぼれたほほにそっと手を当てた。
蘭世は俊を見つめる。
俊はその瞳に答えるようにそっと抱きしめた。
「真壁くん、ありがとう」
「・・・何が?」
「ううん。なんでもない」
「聞かないのか?昨日のこと・・・」
「うん。いいの」
(聞いたもん!)
(聞いたのか・・・)
俊は少し顔が赤くなったのを見られないように、すばやく蘭世の唇にキスを落としくるっと背を向けた。
「帰るぞ。腹へってんだ。ハンバーガーでも食おうぜ。おごるからよ」
「うん」
蘭世は涙をぱっと拭いて笑顔で答えた。

「・・・・・・それにしても、おまえ昨日居留守使っただろ、朝も逃げたし。」
「えっ?いや、その・・・」
「お袋さんどぎまぎしてるし、俺がわからないとでも思うのか?」
「だってぇ、、、」
二人は寄り添って校門を出て行く。
夕焼けに照らされて出来たふたりの影が長く伸びていた。



あとがき

100題に入れようかとも考えたんですけど、ぴったり合うお題が見つからなくてオリジナルにしました。
といってもよくある題材なんですけどね・・・汗。
出てくる女生徒(名前もつけてないけど)をもっと意地悪なヤツにホントはしたかったんですけど、できませんでした!
(開き直り・・・)

真壁くんが蘭世について語る姿ってホントにサイコ〜。
もっと語らせたいのですが、また別の題材に組み込もうかと思います。(ネタが切れるので・・・(^^;))

私も若い頃、恋愛沙汰で呼び出したり、また呼び出されたりしてました。
学生時代ってよくありますよね。そういう状況。
ライバルだった女の子が卒業のときに
「私はほんとはkauranと仲良くなりたかったの。違う人を好きになれてれば・・・」
と言う内容の手紙をくれたことがありました。涙が止まらなかった。
先日、その手紙が机の奥から出てきたので、感傷に浸りながら題材にしちゃいました(^^;)
(↑何でも題材にしちゃうヤツ・・・すみません。)
当時はつらいことでも時間がたつとせつなくていい思い出に変わるものなんですよね。。。












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