12 痕跡(あざ)
ある日の夜半。
薄い布団のなかで俊は上半身裸のままでうとうとと眠っていた。
背後から誰かが腕をそっとさする感触がして、はっと目を覚ました。
くるっと寝返りをうってその人を見る。
同じふとんに横になっていた蘭世がさすっていた手すっとを引っ込めて、えへっと笑った。
「なんだ?」
眠そうな目を半分だけあけて、俊は蘭世の肩を抱いた。
「星形のあざ、きれいにあるな〜って思って」
「・・・ああ、そうだな。ちゃ〜んと魔界人に戻ったからな」
「王子様、、、なんだな〜って思って」
俊は閉じかけてた目をパッと開けて、蘭世を見つめた。
「なんだか、不思議。真壁くんが人間だったころも今の真壁君も私の中ではな〜んにも変わらないのに、このあざがあるのとないのとでは全然違うのよね。」
「・・・」
「真壁君が生まれ変わったときに、今までなかったあざが、ここに出来てた。うれしさと驚きと悲しさと・・・そんなに時間たいしてたってないのに、すっごく昔のことのような気がするね」
「・・・そうだな」
「しかも、王子様だったなんてね。。。でも真壁君が変わった王子様でよかった♪」
「なんだよ。変わった王子様って」
「だって、アロンみたいに王子様、王子様してたら、私なんか今頃こんなにそばにいれないかも・・・」
くすっと蘭世は笑った。
「・・・たまたま生まれ変わったのが魔界の王子だったっていうだけだ・・・」
俊は蘭世に回していた腕にきゅっと力を入れた。
「それに、、、」
「それに?」
「どんな立場でも俺はお前と出会うだろうよ。出会ったらどんな立場でも離れられないだろ」
「真壁君・・・」
蘭世が俊を見つめる。
「じゃあ?もし、真壁君が人間のままだったとしても私と一緒にいてくれた?」
「どうだと思う?」
「人間と魔界人はだめでしょ?」
「もし、俺がずっと生まれ変わることもなくて人間のままだったら、、、」
「だったら?」
「・・・お前をかっさらって逃げたかな」
「・・・!!」
「なんてな」
にっと笑って俊は蘭世を引き寄せて、額にそっとくちづけた。
「ずっと一緒?」
「ああ」
「はふ、ねみい・・寝ようぜ。明日起きられねえぞ」
「・・・うん♪」
薄い布団に二人がくるまる。
星だけが瞬く夜である。
あとがき
甘。
こんな優しい真壁君なんて真壁君じゃな〜いと思いながら
こんなこと真壁くんに言われちゃ気絶するな〜と妄想中の作者でございます。