an accident hapiness

 



                             painted by 咲蘭
                             written by kauran













       この作品は、ときめき☆文化祭の際に、
       咲蘭さまとコラボレーションさせていただいた作品です☆













本日快晴、文化祭日和。

聖ポーリア学園、高等部は、土曜日ということもあって、朝から大勢の来客がつめかけていた。

校門から校舎へと向かうメインストリートの両脇には生徒達による模擬店が、祭りの盛り上げ役を買っている。

家族連れ、カップル連れ、友人同士、様々な組み合わせが入り混じりながらも、

それぞれが楽しそうに歩く姿は、この文化祭の一ページを彩る一コマとなっている。





*****     *****     *****





只今、時刻AM10:00。

2年A組のクラスでは、本日の舞台発表、午前の部、2番手の順番に組み入れられた自分達の出番を

今か今かと待ち受けていた。



舞台の大道具類は、昨日のうちにほぼ、講堂の舞台そでに運んでいたので、

今日は、出演者たちの着替え、メイク、そして小物類を直前に運び込むのみである。

しかし、手持ち無沙汰な分、気分の高揚とそれに伴う緊張は計り知れない。

緊張を隠すためか、それぞれの口数が自然と多くなる。



そんな中、教室の窓のところに背を預けて一人クールを装ったまま、

クラス内の慌ただしさに我関せずといったそぶりで眺めるだけの男がいた。

ただ、その視線だけは、鋭い眼差しで、何気に一人の女を黙って追いかける。



その視線の先で、蘭世は、綺麗な薄いピンク色のドレスに身を包み、

長い黒髪は、サイドだけを後ろ側にまわして結い、後ろ髪と一緒に背中にまっすぐ垂らしていた。

顔は、衣装に合わせて、薄く化粧を施し、一段と魅力的な雰囲気をかもし出しながら、

衣装担当の女子生徒たちとともに、にっこりと笑みを浮かべていた。






2年A組では、ある国の王子と、敵対する隣国の王妃との悲恋物語という、

どこかで聞いたことのあるようなストーリーで、舞台発表をすることになっている。

そして、蘭世はその主役、ローザ姫を演じる。今、身につけている衣装もそのためである。

そして、相手役のもう一人の主役、エリック王子は・・・・・・・・





時田崇史、このクラスの委員長である。



というのも、この企画を提案したのが、彼であれば、脚本を書いたのも彼、

監督、演出、全て彼の指導のもとに行われた。

ノリのいいこのクラスでは特に反対もなく、時田の案は承諾された。

そして、もちろん、配役も彼の手に委ねられた。



蘭世は困ると抗議したものの、周囲のノリの拍手の中で一同一致で、

受け入れざるを得ないまま、今日に至ってしまった。





「蘭世、きれいよ〜〜!本当のお姫様みたい・・・」

蘭世のメイクを手がけていた真奈美が高い声ではしゃいだ。

ホントホントとクラス中が同意する。



「そ、そう・・・?」



最初は乗り気でなかった蘭世もこういう風にはやしたれられると悪い気はしない。

エヘヘと少し照れながら、恥ずかしそうに笑った。



「やっぱり、君にして正解だったよ。ほら、僕達よく似合うだろ?」

王子姿に扮している時田は、そういいながら蘭世の横に並んだ。





(フン!何言ってやがる・・・)



一部始終を黙って見ていた俊はイライラして、チッと小さく舌打ちしたが、

少し気分を落ち着けようと教室を出た。




*****     *****     *****




俊は大道具作成の裏方係。

キャストになる気などさらさらなかったし、どうせ何かをしなければならないのならということで、

自らかってでた。

でも、まさかそのときは蘭世が主役を演じることになるとは全く思ってもいなかったのだ。





もっと早く、時田の思惑に気づいていれば、それを阻止する何らかの手段があったのかもしれない。

時田の思惑は分かっている。

恋人役を演じることをきっかけに蘭世との距離を近づけようとしていることは、気持ちを読むまでもない。

恋愛感情に疎い俊ですら、ヤツの態度を見ているだけでわかる。





自分が蘭世の恋人であることを周囲が知っていれば、

こんな簡単に事が運ぶことはなかったのかもしれない。

2人の関係はまだ公にはなっていないのだ。

クラス中も、俊と蘭世は中学の同級生でもあるし、仲のよい友達同士くらいにしか、

見ていないようだった。

それはそれで、特に干渉も受けずよかったのに・・・。

こういうことになってしまうとは・・・。





決まったからといって、それを抗議する勇気もなく、俊はただただ、見守るしかなかった。



しかも、蘭世が「どうしよう・・」と相談してきたときも、苛立ちと焦りから、「いいんじゃねえの?」と

思ってもいないことを言ってしまった。

蘭世は少し悲しげな顔をしていたが、「・・・・・・そうね」と返してきた。

そして、それ以来、まともに口を聞いていない。





今、このときこそ、同じクラスであることを恨んだことはない。

違うクラスなら「しょうがない」とあきらめることも、逆に「断れ」ともっと強く言えたかもしれない。

しかし、同じクラスというしがらみの中では、状況が分かるだけに強く気持ちを押し出せない。

どうにかしたい、でも何もできない自分を歯がゆく思う。









にぎやかな校内を当てなくぐるっと一周し、

本番まであと30分、

そろそろ戻るかと思い、手洗いを済ませ、ふうと息をついてから俊は再び教室に戻った。

すると、先ほどの空気とは、一転して、緊迫とした空気が漂っている。

何事かと思い、俊は教室の入り口の側にいた男に「どうしたんだ?」と声をかけた。





「あっ!!真壁!!おい!真壁来たぞ〜」

その男は俊の姿を見ると、部屋の中心に向かって声をかけた。



クラス中の目が一斉に俊に集まる。

その中にいた衣装担当のユカリが、小走りで俊のもとにかけより、腕を引っ張って教室の中に引き入れた。

「真壁くん、どこ行ってたのよ〜!!もう!とりあえず、話は後よ。さっ、これに着替えて」

そういうと、俊のシャツのボタンに手をかけてきた。





「な、な、なんだよ!ちょっと待て!」

俊は突然のことにうろたえながら、かろうじて拒む。

「時間がないのよ。蘭世を助けると思って!」

「は?」

そういって俊は蘭世の方を向くと、蘭世は両手の平を顔の前で合わし、ゴメンと口を動かした。



「時田くんが、急にお腹が痛いって苦しみだしちゃって、保健室に行ったのよ。

舞台に穴あけるわけにはいかないし・・・」



「なんだって?」



「そしたら、蘭世が、真壁くんが代役してくれたらできるっていうから・・・・」



「なっ!?江藤っ!お前・・・!!」



「ゴメン!真壁くん、お願い!」

蘭世は先ほどの姿勢をさらに前に崩して頼み込む。



「お、俺・・・セリフとかわかんねえし」

「私が覚えてるから、私が言うように言ってくれればいいから!」

「演技なんて、できるわけねえだろ!」



「ガタガタ言わないの!穴あけるよりマシでしょ!?」

途中でユカリが口を挟んだ。

わけのわからないといった俊とはうって変わって、ユカリは着々と俊の着替えを進める。



「早く!ズボン脱いでよ。それも私にさせる気?」

「なっ!!!/////ば、バカヤロウ!!わ、わかったよ!」

と俊はそう言い放って、ユカリの手から王子用のパンツを奪い取り、トイレにかけこんだ。

「くっそ〜なんで俺が人間界でまで、こんな格好・・・」

そういいながら渋々、衣装に着替えた。

「よし!説得完了!」

ユカリはそういってにっこり蘭世に向かって微笑んだ。

蘭世もその笑顔につられて、苦笑した。





*****     *****     *****





幕が開ける。

突然のトラブルは微塵も見せず、2年A組の舞台は始まる。



俊はしょうがなく力を使い、蘭世から教えてもらったセリフを暗記したため、

演技力はともかく、台詞回しはバッチリだった。

そして、初めて2人がダンスパーティーで出会うシーン。



最大の見せ場。

舞台に2人だけで、ダンスをしながら一瞬にして恋に落ちるシーンである。

とりあえず、しばらくは踊るだけで沈黙の部分が多い。



まだセリフがあるほうがましだ。

沈黙は、お互いの存在を一層際立たせる。

お芝居とはいえ、二人で寄り添うのは照れてしまう。

しかも、数え切れないほどの瞳に注目されているのである。それが二人を余計意識させるのだ。



蘭世はそぉっと顔をあげて俊の顔を見た。

そしてその動きにすばやく俊が気付く。

申し訳なさそうな瞳がこちらを見ている。

その潤んだ瞳を見ていると、照れや恥じらいなどは瞬時に飛び去ってしまうかのように思えた。







ダンスの音楽にあわせながら、俊によりそい、蘭世はこっそりとささやいた。

「ごめんね、真壁くん」

「・・・・まったくだ」

「でも、私・・・・正直うれしいかな・・・なんて」

「何が」

「こうやって、真壁くんと恋人役ができて・・・」

「・・・・・・」

蘭世が少し赤くなってうつむく姿に俊の胸はキュンと軋んだ。

蘭世の背中に添えた手が少し汗ばむ。



何も答えない俊を見て蘭世は少し、不安げな顔をし、

「・・・・・・やっぱり、怒ってる?」

と、首をかしげながら上目遣いに聞いた。



その顔が、化粧しているせいか、なんだか大人っぽく、俊の鼓動は早まった。

このまま、押し倒したい衝動に駆られるのをぐっと我慢して、その分、抱いていた腕に少し力を入れた。

そして、顔を見られないように蘭世の耳元に唇を寄せて言った。


















「えっ?」

蘭世の聞き返した言葉を無視して、俊はダンスにまぎれながら、耳元にあった唇を頬にそっとあてた。

俊は蘭世が顔を真っ赤にさせるのに気付かないフリをし、もう一度強く抱きしめて、

遠くから聞こえる音楽に合わせて体を動かした。

後に続く芝居をしばし忘れた瞬間だった・・・。





*****     *****     *****





舞台は、大盛況の中、幕を閉じた。

その後、2人の演技があまりにも自然すぎて、

問い詰められた2人は関係を告白。

文化祭の余韻は大きく後まで引きずることになった。





一方、時田崇史は、急性盲腸のため、即入院。

かわいそうな彼は、想いがその後成就することもなく、なくなく涙を呑んだらしい。












<END>







あとがき

いかがでしたでしょうか。

今更だとは思ったんですが、このまま葬り去るのも悲しいのでUPさせていただきました。

ただ、今読み返すとやっぱ拙い。
特に構成が・・・お題があったので無理やりそれに合わせた感が見え見えデス・・・^^;
ちょこっとだけ修正しましたが、結局あんまり変わってません・・・。


咲蘭さまとのコラボということで、私はしょっぱなから有頂天でございました。

テーマは舞台発表ということだったんですが、話のネタはほとんど咲蘭さまよりいただきました^^;
いくつか頂いたネタを少しずつぜ〜んぶ入れちゃってます。
頂いたもので話を組み立てていったので、かなり早く書き上げることができました。
自分だけなら、こんなにスムーズには絶対書けてませんっ!!^^;

ホントはもっとラブ度を強めたかったんですが、舞台の上だしなぁ・・・という意識が働いてしまったので、
ほんのりラブで止めてしまいました^^;
途中、出てきたオリキャラは全くのオリジナルです。kauranすら誰っ!?って思ったほどです・・・^^;
もっと個性を出した方がよかったのかもしれませんが、どちらにしても脇キャラなので、簡単に済ませてしまいました〜(笑)

咲蘭さまのイラスト内で、俊に決め台詞を言わせよう!との案も咲蘭さまからいただきました。
とってもいい感じになりましたでしょ?
王子のコスプレもとってもステキですし、蘭世ちゃんの衣装も私のイメージに合わせていただいて、
kauranは舞い上がってしまってます。
イラストの存在って大きいなぁと改めて実感いたしました☆

とっても素敵なコラボが完成したと思いますっ☆
咲蘭さん、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました☆







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