Memorial day




                            written by 一ノ瀬麻紀様


「今日は楽しかった。ありがとう!」
水族館からの帰り道、蘭世は飛びっきりの笑顔でそう言った。
二人でどこかへ出かけるたび、蘭世はいつもとてもうれしそうな笑顔を俊へと向ける。
その笑顔が、俊にとってもとてもうれしいもので、俊もつられて自然と笑顔になる。

ほんとに些細なことでも、幸せそうな笑顔を見せる蘭世。
その笑顔が、自分だけに向けられている。
そう思うだけで、俊もまた幸せな気分になれるのだった。





「あっ!流れ星!」
二人の目の前を、一筋の光が流れ落ちる。
そして、きらきらと広がる満天の星空の中に、スーッと溶け込んでいった。

「あ!!お願い事しなきゃ!!えっと。・・・真壁くんといつまでも一緒にいられますように!」
俊にまで聞こえる声で願い事をする蘭世に、俊はぷっと吹き出してしまった。
「願い事っていうもんは、聞こえないようにするもんだろ?」
「だってぇ・・・」
少ししゅんとなりながらも、うれしそうにニヤニヤする蘭世。

「気持ちわりーな。顔が溶けちまうぞ?」
「溶けないですよ〜だ」
蘭世はべーっとしたを出しながらも、やはりニコニコの笑顔。
俊のからかう声さえ、蘭世にはうれしいことなのだ。



「真壁くんと一緒に流れ星見たの、初めてだよね!」
空いっぱいに広がる星たちのように、きらきらと輝く笑顔で蘭世は言った。

「えへへ。今日は、真壁くんと一緒に流れ星を見た記念日♪」
両手を広げて、うれしそうにくるりと回る。
スカートが大きく広がり、ドレスを着て踊っているかのような錯覚さえ覚えた。
自分が魔界に住んでいたら、アロンのような格好をし、蘭世もフィラたちのように
ドレスを着、優雅に踊ったりしたのだろうか。


「今日は、一緒に流れ星を見た記念日と、一緒に始めて水族館へ行った記念日。
おとといは、真壁くんから始めて電話をしてくれた記念日。」
蘭世は指折り数えながら、記念日をいくつかあげていく。
「そんなにたくさんの記念日があるのか?忘れちまいそうだなぁ・・・」
くすりと笑って俊は言う。


「真壁くんに始めて会った日から、色々あったけど、思いが通じ合って、こうやって
一緒にデート出来て。毎日が楽しいことばかり」
蘭世は一呼吸おくと、まっすぐな視線を俊に向けて、にっこりと微笑む。


「一日一日が、私にとっては記念日なの。真壁くんとの思いで一つ一つが、全部記念日になるの。
だから、忘れたりしないよ。真壁くんとの思い出、全部覚えていたいもん。」
とびっきりの笑顔でそう言ったあと、ペロッと舌を出す。
「でも、全部は覚えていられないのよね、本当は。」
クスクスッと笑いながら、俊の腕へ自分のそれを絡ませる。


「だから、特に大切な思い出を、記念日としてノートに記しているの。絞っているつもりだけど、
けっこうたくさんになったけどねー。」
蘭世は俊にぴたっと寄り添ったままで、今までの記念日へと思いをはせる。


そんな蘭世を、いとおしそうに眺めていた俊が、ぼそりとつぶやく。
「それじゃあ、今日はもうひとつ、記念日が増えそうだな・・・」
蘭世の髪をそっとなでて、俊はそっと微笑む。

「蘭世・・・。おれと一緒に住まないか・・・?」
「え・・・・?」

俊の思いもよらない言葉に、蘭世は言葉を失う。
自分のおかれている状況が、よく把握できていない様子で・・・。

「おれの生活も安定してないから、まだ結婚はできねーけど、予約して・・・いいか?」
もっと、ムードのある言い方が出来ただろうと思うが、うまい言葉が見つからない。
俊なりの精一杯の気持ちをこめて、蘭世へと思いを伝える。

「返事は・・・?」
答えはもう分かりきっていたけれど、俊は答えを求める。
蘭世の口から、ちゃんと返事を聞きたかったのだ。

「あ・・。はい、・・よろしくお願いします・・・」
目を真っ赤にしたまま、蘭世は思いっきりぺこりと頭を下げる。
そのまま、頭を上げずにいる蘭世の肩は、小さく揺れていた。
ぽたりぽたりと、幸せのしるしが零れ落ち、地面へと模様を残していく。

俊は、そっと蘭世を支えて起こし、優しく体を包み込む。
「これからは、毎日一緒に、記念日をノートに記していこうな」
あふれ出て止まらない涙をそっとぬぐう。

「ボクシングで自信が持てるようになったら、今度はちゃんとしたプロポーズをする。
それまでは、誰の誘いも受けずに、おれを待っていろよ?」
そう言いながら、俊は優しく蘭世の唇へと触れた。


これからずっと、二人で歩んでいこう。
たくさんの思い出と、記念日を作り上げていこう・・・。

ずっとずっと一緒に・・・。



end





**** あとがき ****

kauranさん、一周年おめでとうございます〜〜!
ということで、献上するお話でございます。
しばらくサイト様巡回できていなくて、久し振りにお邪魔したところ、
1周年過ぎたと知って慌てて書いたお話ですので、たいした物でなくてすみません・・・。

お祝いということで、「記念日」というお話にしてみました。
少しでも喜んでいただけたらうれしいです。



kauranより

麻紀さんっ!!とってもかわいらしいお話をいただきまして、
どうもありがとうございます☆
めっちゃ嬉しいぃ〜〜〜〜≧▽≦

もう、めちゃめちゃ王子かっこいいですよぉ。
胸を鷲づかみされたkauranでございますっ☆
「俺を待っていろよ」ってとこ、かな〜り好きですぅ☆
私!待つわっ!!!・・・笑

ホントにどうもありがとうございましたっ♪






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