新年のあいさつ






「「「HAPPY NEW YEAR!!!」」」


新年へのカウントダウンがゼロを知らせたのと同時に、華やかしいクラッカーの音が

部屋中に響き渡った。



日付の変わった深夜、

神谷家の広いリビングに集まった友人達が

年越しのカウントダウンパーティーを繰り広げている。





クリスマスだの歳末だので慌ただしく過ぎていった年末も、

この0時を越えた瞬間に突然空気が変わったような

そんな不思議な感覚に襲われる。

大きな音と共に一気に何かがはじけ飛んだように、

この部屋もさらなる盛り上がりを見せていた。




「俊〜〜♪はっぴーにゅーいや〜♪♪♪」




グラスに口を付けていた俊の背後に

突然の曜子の飛び掛り攻撃が降り注ぎ、

俊は思わず口から噴出した。



日付が変わってもうかなりの時間が過ぎている。

本日、すでにもう何度目かの曜子からの新年のあいさつを聞いた。

「な、なんだよ」

「向こうで二人っきりで飲みましょ〜よ〜☆蘭世なんかほっといてっ!」

「ギャッ!!!」

曜子は右足で蘭世を蹴散らかすとそのまま俊の腕をグイグイ引っ張って

蘭世がバタリと倒れている間に向こうに連れて行ってしまった。

「ちょ、ちょっと!神谷さんっ!!!・・・もうっ!!!」

「お、おい・・・江藤、大丈夫か?」



同じ場で一緒に飲んでいた克が蘭世を助け起こす。

しかし、毎度毎度のこの3人のやり取りにはさすがに見慣れてしまって

克は蘭世の腕を引っ張りあげながらもその手に笑いがこみ上げる。



「なによぉ・・・日野くん、笑ってない!?」



蘭世がぷっと頬を膨らます姿も、もう毎日のように目にするが、

そんなやり取りをもう蘭世自身も楽しんでいるんじゃないかという風にさえ感じられる。

「もう!新年早々、神谷さんったら!」

「追いかければいいじゃねえか。お前らがはっきり言えば神谷だってわかんじゃねえの?」

「克」

ゆりえが克の言葉を制しようとするが出てしまったものはしょうがない。

蘭世は克の言葉にいつになくじっと何か考え込んでいたが、

蘭世はぱっと顔をあげ笑いながらわざと困ったような顔をした。

「だって、新年早々、腕かまれちゃってもやだもん♪」

そこにはいつかクリスマスパーティーの時にも見た余裕の笑顔があった。

「相変わらず余裕こいてんなぁ。そこまでお前を安心させてる真壁のテクが知りたいね」

克の言葉に、瞬間湯沸かし器のように瞬時でボッと顔を赤くさせる蘭世を後ろ手引いて

俊は克の頭をパコリとこづいた。

「あっれ?解放されたのか?」

「こいつをあまりからかうなって言っただろ」

「別に大したこといってねえよなぁ。江藤。」

「え?あ?ハ、ハイ・・・///」

妙にしどろもどろになる蘭世を横目に俊はいくぞっとだけ言って

蘭世を引いてその場を離れた。

「う〜む・・・なんだかんだいってさりげなく二人で行方をくらますとは・・・

隅に置けないねぇ・・・真壁さんも・・・」

克はなぁとゆりえに相づちを求めた。

「克ったら・・・二人はあれでいいのよ。きっと。」

「だってあいつら見てたら、からかいたくなるだろ?」

そういってクククと笑った。

少し離れた場所から俊を探す曜子の声が聞こえてくる。

「解放されたっていうより撒いてきたって感じだな・・・。

かわいそうだから二人が消えたってことは黙っとくか・・・」

克とゆりえは顔を見合わせて苦笑した。






「抜け出してきて大丈夫だったかなぁ・・・」

蘭世は白い息を吐きながらマフラーに顔を埋める。

新年を迎えた元旦の夜道は、

先ほどの喧騒とはうってかわってひっそりと静まり返っている。

「あんだけ騒いでりゃ誰もきづかねえよ」

「誰も気づかなくても神谷さんだけは気づくと思うけど・・・」

「そのうち眠りこけるって。」

時間はもうすでに朝方になっていた。

一体何時間騒ぎ続けていたのだろう・・・。

そういえば目がしょぼしょぼするかもぉ・・・と蘭世は俊とふっと笑いあった。

空が白ばんできている。

「初日の出だね」

蘭世はふと立ち止まって一秒一秒明るくなっていく東の空を眺めた。

「あぁ。せっかく起きてたんだし、部屋の中にいるより、縁起いいもの見たほうがいいだろ?」

俊はそういって蘭世の肩に手を回した。

「えっ?じゃぁそのために連れ出してくれたの?」

「まぁな・・・」

俊の言葉に蘭世はぱっと顔を明るくさせ、マフラーにさらに顎を埋めた。

「・・・うれしぃ・・・。エヘヘありがとう・・・」

「ちょっと寒いけど、山の方まで行くか?その方がよく見えるだろうし」

俊が軽くウィンクする。

「うん♪一瞬でね☆」

「そ。俺だけ一瞬。お前は歩き」

「あっ、ひっどーい!自分だけーー??」

ぶーっとすねる蘭世を見て、俊はぷっと顔を綻ばせた。

「わかったって・・・でも、その前に・・・」

その言葉だけを残し、俊は蘭世の口元まであったマフラーをすっと下にずらすと

そのままその唇に口付けた。

ドクンと蘭世の心臓が音を立てる。

無意識に閉じていた瞳を開くと俊と目が合った。

「今年もヨロシク」

そういって微笑む俊に蘭世はニコリと同じように微笑み

そしてもう一度口付けた。















あとがき

なんてないフツーの話ですみません。
ただ単に、シーズンが新年というだけの話です(滝汗)
しかも無理やり初日の出とか入れてみたり・・・
ホントはもっと初日の出中心に書きたかったんだけど、
実際にkau自身が初日の出たるものを見たことがないので
リアリティに欠け、力尽きました。
基本は久々にフツーな甘めテイストなのを書きたかったのでまぁいっか・・・(と勝手に納得)
めちゃ短いし・・・
ごめんなさいデス///


こんなkauですが、本年もどうぞよろしくお願いします☆