心配

 

ピーポー・・・ピーポー・・・

「ん?救急車か?だれか倒れでもしたのか?」

「誰かしら・・・」

「どうしたんだ?」

ある日の昼休み、突然の救急車の到着に教室内がざわめいた。

「・・・ん?」

机に伏せてうたた寝していた俊も周りのざわつきにさすがに目を覚まし、辺りを見回した。

「なんだ?」

「救急車が来てるの。誰が運ばれるのかしらね?」

近くにいた女生徒が俊に声をかけた。

「へえ。。。学校に救急車なんてめずらしいな。」

俊も窓から少し下をのぞいてみた。人だかりでよくは見えなかったが、かすかに蘭世の気配をその中から感じた。

「!!江藤?」

俊の背中にいやな予感が背中を走る。

その時だった。

「あっ、いた!おい!真壁!」

俊が振り向いた先にいたのは日野だった。

「江藤が救急車で運ばれたぞ!」

「何だって!?」

予感の的中に俊は一瞬身震いした。

「何でも、一緒にいた女をかばって、階段から落ちたらしい。今、救急車で・・・」

「なっ!!」

日野の言葉を最後まで聞かないうちに俊は走り出した。

「お、おい真壁!お前、病院わかってんのかーー?でも意識ははっきりしてたみたいだぞ〜って聞いちゃいねえし、もういねえし、、、はえ〜な・・・」

(でもあのクールな真壁も、江藤のことになると顔色変わるよな・・・はっきりしねえが、わかりやすいっていやあ、わかりやすいよな・・・)

今日は珍しく素直な態度だった俊に親しみを覚えた日野だった。

 

(・・・ちくしょう、俺が、目を開けてれば、落ちるのだって瞬時に止めれたのかもしれねえのに・・・)

廊下を走りながら俊は後悔の念を覚えていた。

(まあ、あいつは死ぬことはないにしろ・・・何かあったら・・くっそ〜、無事でいろよ!!)

校舎の裏まで走り誰もいないことを確かめると、俊は蘭世の方向を確かめた。

(あそこか・・・)

俊は蘭世のいる病院にテレポートした。

 

検査室の前で、養護教師の宇田先生が腕を組んで立っていた。

「あっ、先生」

「あっ、君はよく江藤さんと一緒にいる男の子ね。真壁くんだったっけ?」

(なんで、知ってんだ?この先公、俺のことまで)

「なんで知ってんだ?って顔ね。あなたたち有名だもの。生徒会に反抗してまで、あの学校にボクシング部を作ったりして、話題になってたし、二人で歩く姿はみんなの目をひくものね。目立つわよ。」

くすっと笑って宇田先生が言った。

「はあ。。。」

(そんな目立つのか・・・)俊は照れた顔を隠すようにふっと横を向いた。

「江藤は?」

「頭を打ったみたいだから今一応検査をしてるけど、命に別状はないと思うわ。意識もはっきりしてたし。ただ、足を骨折してるわ。しばらくはすこし、不自由になるわね」

「そうですか・・・」

ふうっと主俊はため息をついた。

(よかった。それぐらいならすぐ直るな)

「ふふ。安心した?さっきの血相はすごかったわよ。よっぽど大事なのね。」

「・・・・・」

(何なんだこの先公は。)またまた俊は赤くなって顔をそらした。

そのとき、検査室からベッドに乗せられた蘭世が出てきた。

「江藤!」

「あっ、真壁君、来てくれたの?えへへ。またドジしてしまいまして・・・」

蘭世は苦笑いをしながら答えた。

(よかった、元気そうじゃねえか)

「まったくだ、気をつけろよ」

俊はぽんと蘭世の肩に手をおいた。

「気をつけろよ、じゃなくて、心配しただろ!でしょ?彼女の前では素直じゃないのね〜」

先生は俊をつっついた。

「・・・・!!」

「え?////

蘭世はぽっと赤くなった。

もちろん俊はまっかっかだ。

やりとりを見ていた看護婦さんがにこにこ笑いながら

「念のためとりあえずは2,3日は入院していただきますけど、まあ、今のところ、特に異常もないようですし、すぐ退院できると思いますよ。」

と言った。

「お世話かけます。」

宇田先生が頭を下げた。俊も一緒にお辞儀する。

そのまま蘭世は病室に運ばれていった。

 

病室について一息つくと宇田先生は言った。

「大丈夫そうね。じゃあ、悪いけど、あとは君にお願いできるかしら。もう今日は授業もないでしょ?彼女の自宅にはこっちから電話入れとくわ」

「あっ、はい。ご迷惑かけました」俊はぺこりと頭を下げた。

「ぷっ、何?あなた。すっかり旦那様ね。くすくすくす。」

「だ、だんな?ばっ、ち、ちが・・・//////

蘭世も赤い顔をしている。

「くすくす、まあいいわ。はいはい。二人の絆はわかりましたっ!じゃ、あとよろしくね」

ウインクしながら宇田先生は歩いていった。

「何なんだ、あの先公は」

後姿をにらみながら俊はぼやいた。

「ふふ、宇田先生、みんなの人気者なのよ。楽しいし、きれいだし。」

「人をおちょくってるだけじゃねえか」

「くすくすくす」

蘭世が笑った。

「それよりお前大丈夫なのかよ」

俊が真っ赤な顔をそっぽ向けながら尋ねた。

「うん、冴島さんがめまいおこしちゃってね、支えようとしたら、代わりに私が落ちちゃったの」

てへへと頭をかきながら蘭世は笑った。

「まあ、ほら、私死なないし」Vサインをして蘭世はにっこりした。

「ばーか。お前なあ、俺がどれだけ心配・・・・っ/////

素の顔に戻りつつあった俊の顔がまた赤らんだ。

蘭世は一瞬きょとんとして、すぐさま顔を赤らませた。

「真壁君、心配してくれたんだ・・・・」

蘭世は目をうるうるさせている。

「いや、その、まあお前は死なないとはわかってたし、それほどでもねえけどよ・・・。」

(何で俺、こんなに言い訳してんだ?)

俊ははあと息をはいて口を閉ざした。

「・・・真壁君、ありがとう、心配かけてごめんね」

蘭世は幸せそうに微笑んだ。

「ああ。」

俊も微笑んだ。

「でも、足が痛い。。。(>_<

真壁君に治してもらえれればすぐなんだけどね〜、人間界じゃそうもいかないしね。。。しばらくは松葉杖かな〜とほほ・・・」

蘭世は瞳をふせた。

「まあ、治せないかわりに、ちゃんと足になってやるよ。」

「ほんと〜!?」

「ああ」

「わ〜い、うれしいな〜」

「その代わり、もう無茶するなよ!」

そういって俊は蘭世に軽くキスをした。

 

そのとき、

「おねえちゃん!!」「あっ!!」

「あ゛っ!!」

鈴世ドアをあけて駆け込んできた。

「あれ、えへへ早く来すぎちゃったかな?」

鈴世が笑いながら、頭をかいていた。

真っ赤になる蘭世と俊。

「蘭世〜〜〜!!」

望里と椎羅も入ってきた。

「何だ?どうした?三人とも」

きょとんとして望里が聞いた。

「いや。べっつに〜」

鈴世がにっこり微笑んで蘭世と俊に目配せしながら答えた。

真っ赤な二人と首をかしげる二人、その間ににこにこしている鈴世の姿があった。

 

あとがき

魔界人ってやっぱり入院なんかしないだろうなっと思いながらも
書いてしまいました。
心配する真壁君の姿を見たかったし。。。えへ。