確かな想い




ジムでの練習を終えて自宅に帰ってきた俊は、誰もいない真っ暗がりのキッチンに電気をつけた。

テーブルには、一人前の食事がきれいに整えて並べられていた。

先ほどまで、誰かがこの場にいた空気。。。

俊はラップに包まれた皿をレンジに入れ温めた。



蘭世が俊の帰ってくる時間に合わせて夕食の準備をする習慣は

前に住んでいたアパートから引っ越した今でも続いている。

毎日だと悪いからと俊も遠慮したことはあったが、

当の蘭世が楽しそうに支度をするのでそのまま好意に甘えた形になっている。

ここで調理する場合もあるが、今日はどうやら家で作ってきたものを持ってきたらしい。

調理器具の濡れ具合で、その程度は俊でもわかるようになった。





結婚式を3日後に控え、さすがの俊にも緊張という感情が湧き出した。

新居への引越しも済み、ようやく家具も整い、俊だけでなく蘭世ももう

今すぐにでも住める環境にはなっているが、自宅から式場に行きたいという希望とともに

蘭世は今もまだ、江藤の家に住んでいる。





一人でこの家にいると、どうもまだ落ち着かず、俊は勢いよく準備された夕食をたいらげた後、

食器の洗い物も済ませ、リビングのソファーにドカッと腰を落とした。

クリーム色のソファは、蘭世の好みで選んだモノだが、俊も結構気に入っている。

テレビを付けて無意味にリモコンでチャンネルを変えるが、

特に興味のわいた番組もなく、適当なチャンネルに合わせたまま大きく伸びをした。





結婚か・・・。

頭の後ろに両手を組み、天井を見上げる。

出会ってから9年、様々なことが2人の間を通り過ぎた。

順風満帆とは到底言いがたい、波乱万丈な人生。

ドラマよりもドラマらしい、数奇な人生の中には、身の危険に迫ることも何度かあった。

しかし、そのたびにそれらを乗り越えてきた。

いや、

乗り越えさせてもらったと言ったほうが正しいかもしれない。

蘭世の助けがあったからこそここまでこれたといっても過言ではない。

赤い糸とか、そんな蘭世じみたことを言うつもりはないが、

結婚が決まると、何故か二千年前の肖像画の2人を時折思い出すようになって、

彼女が側にいることも、彼女を自分が選ぶことも

全て生まれる前から決まっていたことなんじゃないかといつしか思うようになった。

そう思わずにはいられないというか・・・。

選ぶとか、選ばれるとか以前に、もう彼女以外の女性を考える隙もなかったのだが、

そんな運命だとかを毛嫌いしていた時代もあったのに、自分でも丸くなったものだと

俊は苦笑した。





そんなことを考えてると、玄関の方からインターホンの音がした。

何だ?アイツ・・・今頃。

気配でドアの外にいるのが蘭世だとわかる。

俊は玄関まで行ってドアを開けた。





「帰ってたんだね♪」

「どうしたんだ?お前こそ、帰ったんじゃなかったのか?」

蘭世を中に入れながら俊は尋ねる。

「忘れ物しちゃって・・・」

靴を脱いでパタパタと廊下を駆けていく。

そして、リビングのチェストに上に置かれていた財布を見つけると手に取り、

追いついた俊に振り返ってニコリと笑って見せた。





「鍵持ってんだからわざわざインターホンなんか鳴らさずに入ってくればいいじゃねえか」

「んー・・・なんとなくね・・・」

そういいながら蘭世はキッチンの方へ移動した。

「夕食食べた?今日の肉じゃがおいしかったでしょー?」

「ん?あぁ、まあな」

「『まぁな・・・』だって・・・作り甲斐なーい」

そういって首をすくめながらも蘭世は笑っていた。

何気ない幸せ・・・。

そういった言葉が頭に浮かぶ。

蘭世は何か鼻歌を口ずさみながら、たまってきていたタッパを紙袋に詰めている。

持って帰ろうとしているらしい。

そして袋いっぱいになると、よしっと言って立ち上がり「じゃぁ帰るね」と言った。

そして、そのままリビングのドアのところまで歩いていったが、手前でピタリと立ち止まった。

「ホントはね・・・」

蘭世が振り向く。

「ちょっとだけ会いたかったんだ・・・子どもみたいね。エヘヘ」





3日後からはいやでも一緒にいなけりゃいけなくなるのに・・・

それは自分も同じで・・・

オフされた気持ちが再びオンされると、その衝動は勢いよく動き出して、

俊は思わず、蘭世をそのまま抱きしめた。

蘭世は「ひゃっ」と小さな悲鳴を上げ、持っていたカバンと紙袋をバタバタとフローリングに落とした。

しかし、俊の胸の鼓動が聞こえると、その音に呼吸を合わせ、そっと瞳を閉じた。





蘭世の気持ちの波長が自分のものとゆっくり合ってくるのがわかる。

この感じだ。

この感じをずっと感じてきたのだ。

心地よく乱れた気持ちを静めてくれるこの宝物を決してなくさないように、

俊はもう一度強く抱きしめた。

これからは、自分の力を使い切ってでも・・・

「ずっと俺が守っていくから・・・」

そういって蘭世の頭に右腕を回した。

そして蘭世のうなづきをその腕で確かめた後、

俊は身を離して、そのまま蘭世の潤った唇にゆっくりキスを落とした。










END









あとがき

なんか、最近kauの書くお話はどれもこれも似通ってしまって、
自分でもどれがどの題か、どの題がどんな話だったか
わからなくなってしまってます。
ついにネタ切れか・・・( ̄□ ̄;)!!
どうしてもこんな感じになってしまいますね。
しかも、今回も3日後って・・・ワンパターーーーン!!!
ツッコマれる前に自分でツッコミます!
別に4日後でも1週間後でもいいじゃんね・・・^^;

ちなみに「出会ってから9年」という部分がありますが、
数えてみたんですが、今ひとつ自信なし・・・。
2人はいったい何歳で結婚したんデスカーーーー!!!
ここでは23歳としてますが、22かな?と思ってみたり・・・
誰かこの適当なkauに真実を!!!





  



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