素直になれたら


            
後  編











乱馬とケンカしたまま一日が過ぎた。
食事中も一言も話をせず、登校も別々、学校でも目を合わせることもなく一日が過ぎた。
もちろん下校時間も今日は、いつも隣で金網の上を歩いている乱馬の姿はもちろんない。
あかねは立ち止まって後ろを振り向いた。
追いかけてくる気配もなくあかねはもう一度ため息をついた。



もう一度歩き出そうとした時、前方に急に何か気配を感じた。
はっとして気づいたときにはすでに遅く、あかねはその気配にドンとぶつかった。
あまりの勢いにそのぶつかった衝撃であかねはその場に倒れこんだ。


「痛〜〜。(うっかりしてたなぁ・・・いつのまに人がいたんだろ・・・気づかなかった・・・)」
「悪い・・・」
声の主にあかねはごめんなさいと言おうとして顔をあげた。
するとその顔は・・・・。


「・・・・・えっ・・・!・・・ま、真壁俊・・・?」
あかねはぽかんと口を開けたまま俊を無言で指差した。
俊はあかねの言葉には反応せず、後方をしきりに気にしていたが、何かの姿を捉えると「やべっ」ともらして
あかねを引き寄せ、側に置かれてあった青いゴミバケツの陰にあかね共々さっと身をかくした。



「なっ・・・!?」
あかねが突然の俊の行動に何か口にしようとすると、俊はしっ!とあかねの口を手のひらで塞いで辺りを気にしている。
すると
「真壁く〜〜〜ん!!!」
数人の女の子達がバタバタと二人の前を駆け抜けていった。
俊はその集団を息をひそめて黙って見送ると、ふぅーっと大きく息をついた。



「悪かったな・・・まきこんじまって・・・・」
そういうと俊はガクッと塀にもたれた。
「あ・・・ううん。追いかけられてたの?」
「あぁ・・・。せっかく久々に学校に行けたと思ったらこれだ・・・ったく・・・ヒマなヤツラだぜ・・・」
俊はカバンをもって立ち上がると、汚れのついたパンツをパンパンと手のひらで払った。

「ほら・・・立てるか?」
「あ・・・うん・・・イタッ・・・!!!」
立ち上がろうとした瞬間、あかねの左足首にズキリと痛みが走る。



「どうしたっ!?」
「・・・なんか・・・くじいちゃったみたいで・・・」
あかねは手で痛む箇所をさする。
「すまない・・・俺のせいだ・・・家どこだ?送ってくよ」
そういって俊はあかねに手を差し出した。



あかねは差し出された手と俊の顔を見比べた。
(ホントに真壁俊だ・・・)
「あ、あの・・・大丈夫。家近いし、これくらいなら帰れるから。。。ぐずぐずしてたらまた追っ手に見つかっちゃうわよ」
あかねはにっこりと微笑んで言った。
「そういうわけにはいかねえだろ・・・ほら」
「・・・・・・」
あかねはひっこめられることのなかった手にそっと自分の手を乗せた。





     ◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇





「ホントに高校生だったんだ・・・」
あかねはひょこひょこと足を引きずりながら俊にそう話しかけた。

「あぁ・・・」
あかねに肩を貸しながら俊は簡単にそう答えた。

「試合のときは制服じゃないし、一瞬ホントわからなかったわ」
あかねはクスッと笑った。

「その制服は聖ポーリア学園ね。こんな近くにいるなんて思ってなかった・・・」

「プライベートなことはほとんど出してなかったからな」

「さっきの子達ってファンの子?」

「見てえだな。しょっちゅう追っかけてきやがって・・・身がもたねえよ」

「チャンピオンだもん。しょうがないわよ」
さっきの出来事を思い出したのか、ふぅ・・・とため息をつく俊を見てあかねはまたクスリと笑った。

「・・・クス・・・乱馬みたい・・・」

「らんま?」

「あぁ・・・一応私の許婚・・・みたいなもの。ケンカばかりだけど・・・。」

「ふ〜ん・・・許婚・・・か・・・」

「そいつもしょっちゅう女の子に追いかけられて逃げ回ってんの。
私もいっつも巻き込まれるからこんな怪我日常茶飯事なのよ。だからホント、たいしたことないの。気にしないでね」
あかねは申し訳なさそうにぺろっと舌を出して首をすくめる。

俊もそれをみてふっと笑った。

「ホントはすぐにでも治してやりてえんだけど・・・」

「えっ?」

「いや・・・なんでもねえ」

「・・・?変なの。あなたは?彼女とかいないの?」

「・・・・・」

「・・・・いるんだ・・・。フフ。赤くなってる・・・」
あかねはニヤッとして俊を指差した。

「な、なってねえよ///」

(何?照れ屋なところも乱馬みたい・・・)

あかねはアハハと笑った。

「あっ・・・ここなの。私んち。」

「そうか、悪かったな・・・マジで」

「ううん。お礼にお茶でも飲んでいってよ」

「いや・・・いいよ。んじゃな」

「あっ・・・ちょっと・・・」
あかねが俊を呼び止めるのと同時に、天道家の門から俊を呼び止める低い声がした
「オイ!ちょっと待て・・・!」
俊がその声に振り向いた。





     ◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇





「乱馬!」
乱馬が門にもたれかけて俊を睨みつけている。
「あかね・・・その足どうした・・・?」
乱馬は俊から視線をはずさずにあかねに聞いた。
「あ・・・これ?・・・ちょっと転んで足挫いちゃって・・・。たまたま通りかかったこの人が送ってくれたの」
あかねはそう言うとウインクして俊に目で合図を送った。
「ホントか?」
乱馬はジロリと俊をさらに強く睨む。
「・・・・・あぁ。。。」
俊は軽くそううなづいた。
「嘘つきやがれ!俺は見てたぞ。お前があかねにぶち当たったんだろ」
乱馬が低い声で言う。
「なっ・・・!?(なんだ・・・結局近くにいたんじゃないの・・・)
この人は関係ないわよ・・・。私が余所見をしてたのがいけないんだから・・・」
「おめー、真壁ってヤツだろ?チャンピオンだか何だかしんねえけど・・・あかねに言い寄るとはいい度胸じゃねえか!」
「言い寄るって・・・ちょっと乱馬!何勘違いしてんのよ!」
「あかねはひっこんでろ!ちょっとばかし強くていい男だからって手を出す相手を間違えてるぜ。
あかねに手を出すんならこの俺を倒してからにしやがれ!いいか!あかねは俺の許婚だぁーーーー!」
そう言い放つと乱馬は闘志をむき出しにして俊に飛び蹴りをくらわした。
「ら、乱馬・・・」
俊はチラリとあかねを見た。そしてすかさず乱馬の蹴りをすっと交わした。



「・・・チッ!逃げ足だけは早いじゃねえか・・・」
乱馬はふりかえって俊を睨む。
(この男・・・ただ者じゃねえな・・・)
俊も乱馬から視線をはずさずにかすかに身構える。
「じゃぁ、これならどうだーーー!!!火中天津甘栗拳!!!だぁぁーーーーーー!!!」
乱馬から一般人には見えないほどの速さで無数の拳が放たれる。
(なんて速さだ・・・俺の人間の能力だけじゃとてもよけきれねぇ・・・)
俊は思考で乱馬の動きを読み取るとかろうじて拳を交わした。
寸時のスキをついて乱馬からケリも出される。
俊はおっとよろめきながらもわかるかわからないかの早さで少し位置をずらしてテレポートした。
「・・・ん?」
ハタと乱馬が動きを止める。
そして視界から一時いなくなった俊をじっとみた。
(こいつ・・・ただ者じゃねぇ・・・)
「・・・・・・」
「・・・・・・」
暫しの間にらみ合いが続く。



「・・・どうして撃ってこねえ!」
「・・・・・・リング以外でケンカする気はねえよ」
お互い低い声で囁きながらも二人の間には入ることの出来ない緊張感が漂う。
どちらかが一歩でも動けばそれを合図にまた激しい乱闘が始まるに違いない。
あかねは息をつめてじっと二人の動きを見つめ続けた。



(この人・・・普通の人間じゃないわ。一瞬だったけど・・・確かに消えた・・・。
それだけ動きが速いってことなのかしら・・・ううん。違う確かに気配が消えてたもの・・・。
一体、どんな修行を・・・?)
あかねは乱馬に視線を送る。
(力は・・・互角・・・?でも・・・この人の実力が全然見えない・・・・・・・・・乱馬・・・・・)



「テメー何者なんだ・・・」
静寂を乱馬の声が打ち消した。
身構えたままで乱馬がたずねる。
「・・・・・・お前こそ・・・・」俊は微動だにせず、一言だけそう漏らす。

(この俺の拳が一発も当たらないなんて・・・しかも闘志も感じられない・・・
これじゃ飛龍昇天破も打てやしねえし・・・どうする・・・)

「チクショー!オリャーーーー!!!」
乱馬が一歩先に出て、もう一度俊に飛びかかった。
「乱馬!」
あかねが叫ぶ。
そのとき・・・



「あっ!真壁くーーーん♪」
呼びかけと共に蘭世がトタタタと駆け寄ってきた。
「ウワッ」
乱馬は調子を崩されてドタっと地面に落ちる
「ら、乱馬!」
あかねが乱馬にかけよる。



「・・・江藤・・・」
俊がきょとんとして蘭世を見た。
「女の子達に追いかけられてたから大丈夫かなーと思って心配で見にきたの。何やってるの?こんなとこで・・・」
蘭世はまわりをキョロキョロと見回した。
そして倒れている乱馬を見て、お友達?と尋ねた。



「と、友達なんかじゃ・・・・むぐぐ」
乱馬が言おうとしていた言葉をあかねが手で遮った。

「も・・・もしかして・・・さっき言ってた彼女?」
あかねが俊に尋ねた。

「か、か・・・彼女だなんて///」
蘭世は真っ赤になった顔を両手で隠している。

俊はあかねから乱馬に視線をうつし、そしてもう一度またあかねに戻した。

「・・・・・・そっ。」
俊は一言だけそうつぶやいてポリポリと鼻の頭をかいた。

「・・・コホン・・・かえって迷惑かけちまったな・・・悪かった・・・。でも・・・」

「でも・・・?」

「いい許婚じゃねえか・・・んじゃな。・・・ホラ行くぞ」
そういって俊はニヤッと笑みを浮かべたあと、蘭世の背中を押して歩き出すように促した。

「あ・・・うん。・・・あの・・・さよなら〜」
蘭世はわけの分からない顔をしていたが、地べたに座り込んでいる二人にニコッと微笑んでから俊の後を追った。




乱馬はあっけにとられた顔でぽかんとしていた。

「・・・・・・彼女?」

「そ。彼女だって。」

「んじゃ・・・お前は・・・?」

「知らないわよ!あんたが勝手に誤解してただけでしょ?」




「・・・・・・///・・・あっ!!ちょっと待て!許婚なんかじゃないぞぉぉぉーーーー」
乱馬はもうすでに遠く遠ざかっている俊の後姿に向かってそう叫んだ!



バシッ!!



「あんたが先にそういってつっかかっていったんでしょ!」

「えっ?・・・いや・・・あれ・・・?そうだっけ・・・?」

「もう・・・ったく・・・」

「な、なんだよ・・・」

「・・・ありがと・・・乱馬」

「・・・///な、何が!!」

「・・・別に〜♪ね、部屋までおぶってって」

「なに〜〜!!?おめぇ、歩けてたじゃねえか!」

「また痛くなってきたんだもん。お願い♪」

「・・・うっ・・・///(か、かわいいかも・・・)しょ、しょーがねぇなぁ・・・」
そういって乱馬はあかねに肩を貸して立たせ、よっとあかねをおぶった。

「でもあいつ、なかなかやるな・・・も一度マジでたたかってみたいぜ・・・」

「そうね・・・でも・・・・たぶん乱馬が勝つよ」

「・・・・・・そうかな・・・あいつぜってー強いぜ」



「私の許婚が負けるわけないもん」



あかねはそういって、乱馬の首にきゅっと抱きついた。
乱馬は全身を真っ赤にして、ぎしっと音を立てその場に立ち尽くした。





    ◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇





「ねぇ・・・真壁くん・・・さっきの人たちなんだったの?」

「・・・ん?よくわからねえ・・・(けど、人間でもあれだけ速い動きができんだな・・・)」

「ふ〜ん・・・あっ今日ジムお休みでしょ?私ご飯作っちゃう♪何がいい?」

「・・・・・飯?・・・んじゃぁ・・・ハンバーグ」

「はんばぁぐぅ〜?ぷっ。真壁くんってば子供みたい・・・プクク・・・」

「うるせぇ!好きなもんは好きなんだよ!コノヤローー」
そういって俊は蘭世の首に腕を回して軽くしめるフリをした。

「キャー」

日が傾き始め、二人の影がいつしか長くなっていた。
二組のカップルが今日もまた、一歩近くに歩みより、心地よい空気を漂わせていた。








<END>








あとがき


いかがでしたでしょうか?
今回はTraumさまのリク作品でした。う〜、今回もお待たせしまくり・・・遅くなってすみませんでした。

リク内容は

>「格闘○○!、早乙女乱馬vs真壁俊」

でございました。勝ち負けとか、内容は任せていただけるということでしたので、kauが考えましたが、これは・・・この出来は・・・(冷)汗)
何かめっちゃおもしろそ〜と勢いでホイホ〜イと受けたものの・・・
うぅ。。。こんなものになってしまいました・・・。やぱりTraumさまに決めていただくんだったぁぁ・・・。
何もかも中途半端に終わってしまいまして・・・ギャーーごめんなさい。
しかもときめきサイトだというのに、完全に乱あ主役だし・・・^^;反省。
格闘シーンとか、kauは書いたことがなくって・・・擬音語や勢いなどをどう言葉で表現していいかもわからずに・・・(と言い訳)
こんなの格闘ではなぁい!というお叱りがあれば書き直しますぅぅぅ。
題もなんか合ってないし・・・。ガクッ

こんな代物でもよろしいということでしたらどうぞご笑納くださいませ・・・^^;
リクありがとうございました〜〜☆







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