引き留めた瞬間に


             後 編

 




                                                        お題配布元: ≪プレゼント≫






     俊×蘭世です。
      二人が魔界人にもどったあと辺り
      まだまだ無駄に長いっス・・・



















綺麗だ・・・

ふとそう思う。




照れくさくて普段は彼女の顔をマジマジと見つめることなんてそうそう無い。

こんなに見つめたのはゾーンに襲われたあの夜以来かもしれない。

本当はあの夜だって、あれが屋外でなかったら自分は危なかった。







俊の視線につられるように蘭世も俊を見つめている。

大きな潤んだ瞳で、そしてその中には熱く深い想い。

どれほどの時間、見つめあっていたのだろうか。

きっとそんなに長い時間ではなかったかもしれない。

しかし、二人にとっては一秒一秒時を刻む音がこんなにも長いものだとは知らなかった。





先に動いたのは蘭世だった。

ふと蘭世が俊をつかんでいた指の力を強めた。

すんでのところで支えていた体がついに崩れ落ちそうになったのか、

それとも、蘭世の心に何かしらの決意があったのか・・・

どんな意図があったのかはわからないが、それは俊に次の行動を起こさせるには十分だった。

それを合図に俊は支えていた蘭世の体を畳におろした。



そして完全に蘭世を上から組み敷く。。。



「あ・・・あの・・・」

まっかな顔で蘭世が何か話そうとするのを、俊はじっと見下ろした。

そしてその瞳を覗き込みながらその続きを待つ。

瞳の奥の真意を知りたい。

言葉にできないのは自分も同じなのに、それを求めてしまう自分はなんてずるいんだろう。





「江藤・・・・」





蘭世はハッとして目で返事をする。言葉は出てこない。

たぶん出せないのだろう。





「嫌なら・・・今すぐ俺を止めろ。拒否れ」

「・・・・・・」

「お前はどこまで考えてる?キスか?・・・それより先は?」

「あ・・・・あの///」

俊は自分の口調がいつになく攻撃的になっているのがわかった。

普段なら口にしない言葉も惜しみなく出てくる。

逆に蘭世の方が言葉に詰まっている。

俊のどこかいつもと違うそんな言動にとまどっているのだろう。

本能っていうのはこういうものだ。それが改めて身にしみる。





「俺はお前とキス以上のことを望んでる。段階を踏むつもりだったが・・・悪い・・・

それももう正直できそうにない。

お前と今キスをしたら、そこから俺はもうたぶん自分じゃ止められない。止めるなら今だ」

「で、でも・・・私・・・」

「・・・・・俺は・・・・・・止めない・・・・

・・・・・止めるならお前が止めてくれ。今ならまだ間に合う・・・・」

彼女の顔が面白いくらいに真っ赤になる。

照れの極致。そこに嫌悪は感じられない。

しかし、それが自分の勝手な解釈なような気もしてやはり躊躇してしまう。





不思議だった。

拒否ってほしくない癖に、どこかで拒否ってほしいと思っている自分。

それほどまでにやはり自分はこの女を大事にしたいと思っているのかもしれない。

そうだ。もし泣かれでもしたら・・・どうすればいい?

実際、蘭世は今すでに目を潤ませた状態だ。

自分で止めろなんていったもんだから、困らせているに違いない。

そんなことを考え出すとやはり急速に気持ちが落ち着いてくる。

どうやら、もう少しだけ理性は持ちこたえてくれそうだ。





彼女を心から求める自分がいる一方で、彼女を大事に守りたい自分もいる。

白い自分と黒い自分が同時に存在する。

それはもうそれでしょうがない。

そのときそのときに、どちらの自分が勝つか、それはもう運でしかない気がする。





やっぱりかなわねえんだよな・・・コイツには・・・・






そう思った時、俊はふっと緊張の糸が切れた。表情も緩む。



今日はとりあえず、「大事にしたい」自分が勝ったのだろう。

俊は蘭世の隣に半身を下ろし、肩肘をついて蘭世をみやった。

本能はまだ、今もなお心から叫んでる。

それでも、それ以上に、慈しみ愛おしく感じるこの気持ちが勝っていくのだ。

髪をそっと撫でてやる。そしてそのまま頬も撫でた。



「・・・なんてな・・・」

「え・・・」

「・・・・ゴメン。」

「真壁くん・・・」

「そんなカチンコチンになられると、俺が酷く悪者に見える・・・やめた」

そう冗談めかして、俺は微笑んだ。



まぁいっか・・・焦る必要もねえし・・・



そう考えて俊は身を起こそうとした。

その刹那、グイっと蘭世ぬ腕を引っ張られ、再度俊の体は蘭世の上に倒れこんだ。




「ちょ・・・オイ!」



そういって俊は手のひらを畳につけたまま慌てて腕を伸ばし体を支え蘭世を見下ろす。

それもつかの間、蘭世の腕がしなやかに俊の首に巻きつき

唇にやわらかい感触を感じた。



それが蘭世からキスを受けていたのだと気付いたのは、

蘭世の唇がゆっくりと自分から離れていくのを見てからだった。

俊はまだ思考がまとまらないまま蘭世を見つめ続けていた。

というより視線を離せなかったというほうが正しい。




蘭世の真意を測りかねていた。



せっかく・・・・・せっかく止めてやったのに・・・・

せっかく白い自分を勝たせたというのに・・・





伏せていた蘭世の瞳もゆっくりと開き、俊の視線と絡みつく。




「・・・いいの・・・私・・・・」

「・・・・え・・・?」

「私だって・・・その先のこと・・・・望んでる・・・・・///」

「なっ・・・お前・・・」

俊が言い淀む。

想像すらしていなかった。

自分のことが手一杯で気持ちを読むことすら考えつきもしなかったのが裏目に出たのか、

まさか蘭世がそんなことを言い出すなんて思いもしなかったし、一瞬耳さえ疑った。

しかし、当の蘭世は顔をゆでだこのように真っ赤にさせているものの

潤んだ瞳で俊を見つめ続けていた・







「・・・・・お前自分で何いっているのかわかってるのか?」

「わかってるよ」

「お、俺は・・・たぶん、お前が考えてる以上に・・・・

・・・・・その・・・・オス・・・・・だぞ?たぶん・・・びっくりするぞ」



何を言ってるんだ俺は・・・・

しかし、蘭世の言葉で完全に俊は舞い上がってしまっている。

何をいってるのかわかってないのはもはや自分だ。



「・・・・わかってる・・・それでも私・・・真壁くんともっと近づきたい・・・・///」

蘭世はそういって俊にしがみついてきた。

しかし、その体はわずかに震えている。





「・・・・・・」

俊は何も言えなくなった。

蘭世の気持ちがじんわりと心をしみてくる。

男と女の感情は違う。

男の自分と女の蘭世の求める感情は全く違う部分から起因しているはずだ。






それでも

俺だけじゃないって思ってもいいのだろうか・・・・・

それは俺の思い上がりではないのだろうか・・・・・

根本が違ってもそんな自分を彼女も求めているのだということを。。。






ふっと頭が真っ白になって体の力が抜ける。

その拍子に支えていた俊の腕がぐにゃりと崩れる。

しかし、それは一瞬だった。

俊はすぐさま体勢を立て直し、自分にしがみついている蘭世の背中に腕を回し、

ギュッと抱きしめた。





もう・・・

離せない・・・・





そして今まで抑えていたその理性のタガがポンと音がするように外れたのを遠くで聞いた。

それを合図に俊は蘭世の唇を激しく貪った。

離しては口付け、口付けては離し・・・

小さく戸惑う舌を自分のそれで絡め取る。

誰に教わったわけでもないのに、本能で動いていく。

何度も角度を変えながらその潤い柔らかな唇を夢中で求めた。





どれくらいそれを続けていただろう。

お互いの呼吸もそして少しずつ衣類も乱れつつあった。




俊はチュッと音を立ててからそっと名残惜しそうに唇を離した。

そして蘭世の瞳を覗き込む。



「・・・・ったく・・・せっかく止めてやったのに・・・・」

「だ・・・だって・・・///」

蘭世がまた顔を赤らめて視線をそらした。

俊は愛おしくなって蘭世の髪の乱れた額にそっと口づけた。





「いいんだな・・・もう止めない。・・・続けるぞ」

コクンと赤い顔のままで蘭世はうなずいた。

しかし、その後で一言だけつぶやいた。



「一つだけ・・・・・」

「・・・・なんだ?」

「・・・・・・好きって・・・・・・言って・・・・」

「・・・・・・」




俊は蘭世を見つめる。そこに不安そうに揺れる蘭世の瞳があった。

俊の胸の奥がキュンと甘く軋む。

鷲掴みにされるって、きっとこういうことだ。





普段なら絶対口にしない言葉・・・・。

だが理性も羞恥心ももう取っ払ってしまった今、

それはまるで心の奥から沸き起こり、止めることもできずに

あふれるように口から零れ落ちた。






「・・・・・・蘭世・・・・・好きだよ・・・・・」

そういって軽く蘭世のの唇をついばむ。

そしてもう一度蘭世の耳元で低く囁いた。





「・・・・・・愛してる・・・・・心から・・・・・蘭世・・・・・」




その言葉だけを残し、俊は蘭世の体を掻き抱くように強く抱きしめ、さらに深い口づけをおとした。

そしてゆっくりと蘭世の服の中の滑る素肌に腕を伸ばしていった。




しかしそのまま蘭世を強く求めながら、彼女の両親になんて言い訳しようと

頭の片隅でしっかりと考え始める俊なのだった。
















<END>








あとがき


どないやねん・・・・(汗)
やるのかやらんのかはっきりでーい!って思われたことでしょう。

スミマセン。

自分も悩みながら書いてたのれす・・・。

書く前は、また未遂でやめさせたろうと思ってたんですが(←鬼)
途中で、でもな〜どうしようかな〜と悩みだして
書いたろかいっ♪て衝動に駆られました。
実際書いてませんが・・・気持ちでは書いた(笑)

いつもよりちょっとえっちぃかったですが、
でもこれくらいなら「甘い」で収まる乙女の範囲よね?(と強く同意を求める)

ゆってもチューしかしてないし。(場面上では)
スミマセン・・・一応全年齢対象サイトなもので^^;
というのはいいわけで書けないだけなんですが・・・。(オイ)


長々となりましたが
読んで頂いてどうもありがとうございました。










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