恋路ひとえに




   








俊×蘭世。
設定は中学時代です。
原作のストーリーの流れは無視してますのでご注意を!















「帰ろうかな」



蘭世は鞄を手に取ると歩き出した。

そして渡り廊下の角を曲がったところではっと立ち止まった。

そこには俊と例の彼女が向かい合って立っていた。

(げぇ〜・・・気持ちが落ち着いたと思ったとたんにまた出くわしてしまった・・・)

蘭世は何か言おうかと迷っているうちに女の子は蘭世の姿を見て取るとぐっと唇をかみしめて

そして目を潤ませたかと思うと、そこから走りさった。



「あ、ちょ、ちょっと・・・」



蘭世が呼び止めるのも聞かずにその子はそのまま消えていった。

「い、いいの?真壁くん」

「何が」

「・・・追わなくて・・・・」

「何で俺が追うんだよ」

「だって・・・」

「・・・・」

「・・・・」



お互い無言のままその場に静かな空気だけが流れる。

追って欲しくないくせにそんな言葉が出てしまった自分に苛立ちすら覚える。

「お前こそ、何かあったんじゃねえのか」

「えっ?」

「ほら・・・なんつーか・・・元気なかったろ、朝から・・・」



・・・・・今日の蘭世が元気ないところってきっと真壁くんも気づいてるよ。・・・



楓の言葉が耳にこだまする。

切なく響く。

うん・・・真壁くん・・・気づいてくれてたみたい。。。

嬉しいけど、切ないよ・・・楓ちゃん・・・。







「あの子・・・真壁くんのこと好き・・・なんだよね・・・」

「は?」

「ごめん・・・私聞いちゃったの。この前・・・彼女が真壁くんにシャツ貸してほしいって頼んでるところ」

俊はぎょっと目を見開いて持っていた紙袋に目をやると、さっと後ろ隠した。

「な、なんで隠すの?」

「え!?え、あ・・・これは・・・別に・・・」

「返してもらったとこだった?ご、ごめんね。なんかタイミング悪いところに遭遇しちゃったみたいで」

「別にそんなんじゃねえよ」

「元気なかったのはそのせいなの。」

「えっ・・・?」

「私が勝手に傷ついて悩んで落ち込んでただけ・・・ゴメンね。真壁くんは何も悪くないのに」

「・・・・・・」

「それだけ。あっでももう大丈夫。もう今は元気よ♪心配してくれてありがとう。

真壁くんが心配してくれただけで嬉しい♪」

そういって蘭世はフンっとガッツポーズをしてみせる。

俊はそんな蘭世をあっけにとられた顔で見ていたが、ふぅと一つ息を吐いた。



「何か・・・お前にはかなわねぇな。。。」

「え?何が?」

「そんなに服が貸してほしいならお前にも貸してやるよ。ほら」

そういって俊は持っていた袋を蘭世にポンと投げた。

「え?っと・・・あわわ・・・」

落としそうになって蘭世は必死でそれを掴むと胸元に抱き寄せた。

「それで気が済んだか?」

「え?」

「それで、お前が元気になるならそんな服やるよ。焼くなり煮るなり好きにしろ」

「・・・わ、私はそういうつもりじゃ・・・」

「その代わり・・・」

「・・・・」

「いちいち一喜一憂しないでくれ。

・・・こっちが参るんだよ。お前が元気ねえと・・・」

「え・・・それってどういう・・・」

「うるさいっ!!!いちいち聞くな!///じゃ、じゃあな」

そういうと俊はばっとその場から駆け出してしまった。

「あ・・・ちょっと真壁くん!」



楓ちゃん・・・

私・・・あの子より私の方がって思っちゃってもいいのかな・・・。

あの子のことを気にしながら、

それでもエゴイストになってしまっていいのかな・・・。

だって・・・だって・・・

嬉しくて・・・涙が出るよ・・・。



そういって蘭世は俊に投げ渡された袋に顔を埋めて

騒ぎ始めた鼓動が治まるのを壁にもたれてゆっくりと待った。

この服を彼女もこうやってぎゅっと抱きしめたに違いない。

俊が彼女に何をどう告げたのかはわからないが、彼女の瞳からあふれ出しそうになった涙が

全てを物語っている。

あの子の気持ちを思うと胸がいたい。

それでもそれでも、やっぱり俊を好きだという気持ちには変えられないのだ。

恋ってそういうもの。

切なくて痛くて、それでいて・・・・・・一途なものなのだ。



(真壁くん・・・)



やっぱり私・・・真壁くんが好きです・・・




蘭世はそう心で唱えるともう一度その袋をぎゅっと抱きしめた。













<END>







あとがき

書きたいことがまとまらないまま書き始めたら
まとまらないまま終わってしまいました・・・(砕)
テーマの制服もちょっとしか出てこないしなぁ・・・。
原作にあった筒井くんのコンサートの後の告白シーンも
完全になかったことにしちゃってるし・・・オイ。
入れてもよかったんだけどなんだか書きにくくてムシしました。すみません。

しかも、うちの蘭世というヤツはよくもまあこんなに衝撃シーンに出くわすことよ。。。笑

まぁパラレルと思っていただければ幸いです///

制服を借りるというネタはkauのノンフィクションネタです。
蘭世ちゃんは借りているのを見たという立場にいますが、
kauは実際借りた立場の人です。
いやぁ。。。頑張った。あの頃の私^^;
奥手な私はそれすら勇気がいることだったのですねぇ・・・。(照)
制服というテーマを聞いてこのネタで書きたかったんですが、
ちょっと難しかったなぁ・・・。







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