黄昏キャンディー
*克×ゆりえです
後 編
羽織っていたマントも今は重く感じる。
無造作にそれを肩から外しながら自分の教室に戻ってきた克は机にドンと腰掛けて何気なく夕焼けを眺めた。
燃えるように赤くて、眩しいくらいで・・・切なくなる。
クラスメイトたちもグラウンドに向かったようで誰も教室には残っていない。
夜の闇に向けてすでに点りはじめたライトはハロウィンらしいポップな音楽と連動して
リズミカルに点滅しながらグラウンドを包みこもうとしている。
楽しいはずなのにここから見るとその風景はまるでテレビの向こうの作られた世界のようにどことなく淋しくて
克の心はどんよりとしたままだった。
そんな時、教室のドアがガラッと開けられた。
びくっとして振り返ったその先には―――。
「・・・ゆりえ」
制服姿のゆりえがドアのところに微笑んで立っていた。
「どうしてここに?」
「だって探してたんだもん」
「え?俺を?」
ゆりえは何も言わず教室のドアを閉めるとゆっくり克のそばに歩いてきた。
「せっかくのポーリア祭、一度も一緒にいられなかったから・・・」
そういってゆりえは克の隣からグラウンドを眺める。
「あ〜、始まっちゃったわね」
久しぶりに間近でみたゆりえの横顔は、なんだか形容しがたいくらい綺麗で
克はドキマギする。
いつだってそうだ。子供の時から・・・
ゆりえの姿に、横顔に、そして笑顔に、克は心ごと奪われていた。
どんな時だって、その気持ちを憎むことで隠そうとしていた時だって。
いつだって克は心ごとゆりえに囚われていたのだ。
しかもそんな彼女が自分を探してたなんて言うもんだから・・・
「あ・・・今から行けば間に合うんじゃねえか?途中参加もアリだろ」
そういって克は逸る鼓動を紛らわせるように机から飛び降りた。
しかしゆりえは首を横に振った。
「いいの。もう」
「でも・・・最後だろ?一応・・・」
「・・・うん・・・でも、いいの。
ここで・・・克と二人でいるほうがいい」
「え・・・?///」
「どこ行ってたの?探したのに」
「いや・・・俺だって・・・」
お前を探して・・・という言葉はそのまま飲み込んだ。
そんなことはもうどうだってよくて・・・
「あれ?よく見ると仮装してる?」
「は?ああこれ?一応ドラキュラ伯爵。牙つき」
そういって二カッと笑って仮牙を見せた。
「あはは。うん。よく似合ってる」
想いを確認しあったあの日から、ゆりえはよく笑顔を見せるようになった。
そう、ずっとこの笑顔が眩しくて、大好きで・・・。
自分には届かないものだと言い聞かせて心を閉ざしていた。
でも今は、すぐそばに、手を伸ばせば届く距離に、
・・・それがある・・・。
「かっこいいよ♪」
「そ、そうか?」
克はふと思いついて内ポケットからラスト1個になっていたキャンディーを取り出した。
「やるわ」
「・・・キャンディー?」
「コレしか残ってねえけど」
「ありがと」
「・・・昔ガキの頃に二人でおかしもらいに高等部に来たよなぁ」
「・・・そうだったわね」
「今やせびられる方。年取ったもんだぜ」
「クスクス・・・そんなこと言って・・・」
ゆりえはまた笑いながらもらったキャンディーを口にほおりこむ。
「うん。おいしい♪あの頃を思い出すね」
「・・・お前は持ってねえの?おかし」
「あ・・・ごめん・・・全部あげちゃったの」
「あーあ、俺も欲しかったな〜。生徒会長のおかし」
「もう!ゴメンって」
「・・・・・まあいいや。代わりのものもらおっ」
「え?」
そういうと克はゆりえの腕を引き寄せた。そしてその刹那―――。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・甘くてうめえ・・・」
「・・・もう・・・バカ・・・」
「・・・・もういっかい・・・」
もう一度克はゆりえに口唇を近づける。
今度はもっとゆっくりと、
そして背中に回した腕に克は強く力を込めた。
沈みかけた夕陽が二人の重なった影を長く伸ばしていた。
<END>
あとがき
いかがでしたでしょうか?
克×ゆりえは初カキでしたし、ストーリー自体にも自信がなく
おどおどした感じがでちゃってますがどうもすみません・・・汗
ゆりえさんの口調が難しいっス。
丁寧なお嬢様言葉を残しつつ、克の前では少しくだけてきた・・・みたいな感じを
出したかったんですけどね・・・^^;
克くんは結構好きです。
原作を読んでる時から好きでしたが書いてたらもっと好きになった。
この話ではちょっとネガティブ思考になっちゃってますが・・・。
これを機にまた克×ゆりえのお話も書いてみようかなと思いました。
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