Aroused magic





 story設定時期:中学時代/俊転生前
         若干脚色あり







「あー、ひどい目にあったぜ・・・」

バタバタとマンションに駆け込んだ俊は、濡れた頭をブルブルと振った後、

ポケットから鍵を取り出すとドアを開けた。

「おーい、お袋ーー・・・・あれ?」

俊がのぞいた部屋はまだ真っ暗で、人のいる気配が感じられない。



「まだか?・・・とりあえず入れよ」

そういって蘭世を玄関に入れる。

「お、お邪魔します」

俊は思いっきり水分を含んだ靴と靴下を脱ぎ捨てると、居間の方に入っていった。

母の華枝はまだ戻っていないらしくシンと冷えた空気だけがそこにあるだけだった。



「まいったな・・・」

かといって、玄関先でずぶぬれの蘭世を放り出すにも気が引けて、

とりあえず、脱衣所においてあるタオルを二枚取り出すと一枚で自分の頭を拭きながら玄関に戻った。



「お袋、まだ帰ってないらしい。ほらとりあえずタオル」

「あ、ありがとう」

大きめのタオルで多少の水分は取れたが少し乾きだした肌は体温をどんどん奪われ

蘭世はもう一回クシュンとくしゃみをした。

このままだと風邪を引かせてしまう。



「とりあえず上がって、で、シャワーだけでも浴びた方がいいんじゃねえの?」

「え・・・///で、でも・・・」

「風邪引くぞ」

暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ肌寒い。しかもこんな状態のままでは・・・



「別に取って食いゃしねえよ」

俊の発した言葉に蘭世はボンッと顔を赤らめる。

「あああ当たり前ですーーーー///」

当たり前だ!・・・んなことするかっての!!

半ば自分に言い聞かせるように自分の中で俊はつぶやく。



「いいから上がれって。そこも寒いだろ?」

「ハ、ハイ・・・お邪魔します・・・」

蘭世もずぶぬれになった靴下を脱いだ。

裸足になった素足が妙に艶かしい。

ゴホンと俊は咳払いをして一足先に奥にむかう。

そして新しいバスタオルと、あと自分の部屋からスウェットの上下を出してきた。

そして居間のテーブルのところで立ち往生している蘭世を見つけると、

ん、といってそれを差し出した。



「お袋がいねえから、とりあえず俺の。洗濯してあるから大丈夫だぞ」

ちょっと照れながらいう俊に蘭世は思わずプッと笑う。

「な、なんだよ」

「ありがとう・・・じゃあお言葉に甘えてお風呂お借りします・・・」

「お、おぅ」



      ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「その辺に置いてあるもの、適当に使っていいから」

そういうと俊は蘭世を浴室に残したまま居間に戻った。



「はぁーーーーーー」

急にドッと疲れが俊の肩に落ちてきた。

張り詰めていたものが一気に解けた感じ。



・・・ったく・・・なんでこんなことに・・・



とりあえず俊も濡れた制服をジーンズに着替えコーヒーを入れる。

冷えた体にゆっくりとコーヒーが注ぎ込まれ、いくらかほっと息をつけた。

ドライアーで濡れた髪を乾かしてソファーに腰を沈めるとそのまま眠ってしまいそうになる。

しかし、ガチャリとドアが開いた音で、またビクンと俊は身を起こした。

蘭世がドアからこちらをのぞいている。



「あの、シャワーどうもありがとう」

「い、いや・・・あったまれたか?」

「うん!ついでといっちゃなんですが・・・ドライアーお借りできますか・・・??」

「あ?あ、あぁ・・・これ」

そういってソファーに置きっぱなしにしてあったドライアーを蘭世に渡した。

その一瞬シャンプーと石鹸の香りが俊の鼻を掠める。



ドキンとまた俊の胸が鼓動を打つ。



洗面に戻った蘭世を見送ると、ようやく俊は身動きを取れた。

鼓動を抑えようと慌てて蘭世用のコップを食器棚から取り出してコーヒーを注ぐ。

そして、そのままグラスも手にとって勢いよく蛇口から水を注ぐと一気に飲み干した。



「落ち着け!俺!」



調子が狂う。

どうしても今日のアイツは俺の調子を狂わせる。



なんなんだ・・・いったい・・・



気を紛らわせるために音楽をかけてラックに置いてあった雑誌を手に取り

俊はもう一度ソファーに座った。

パラパラとめくるも内容は頭に入ってこない。

そのまま背もたれに頭を預けて天井を何気に眺める。

そして大きく深呼吸。

そうこうしているとドライアーの音がやんだ。

そのやんだ後のシンとした静けささえも、今の俊にとっては刺激的でそこに蘭世がいるということを

いやでも確信せざるを得なくて、ガチャリとまたドアが開いた。



「真壁くんどうもありがとう」

濡れた髪も乾いてすっかりいつものようにもどったように見えた蘭世だったが

どうしても俊にとっては細かい部分が気になる。

少し上気して赤く染まった頬や、何もはいていないその素足や、

いつもは自分が着ている服に身を包まれているその姿までもが俊の心を煽ってしまう。





平常心・・・平常心・・・





そういいきかせて俊は蘭世に用意したコーヒーカップを手に取った。










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