Aroused magic





 story設定時期:中学時代/俊転生前
         若干脚色あり







「冷めちまったかな・・・?」

「あ・・・入れてくれたの?うれしい。冷めてもいいよ。今、私ホカホカだから♪」

そういってニコリと微笑んで蘭世は俊の手からコップをもらった。

蘭世がクルッと体を反転させると髪がフワリとなびく。





まただ・・・・





シャンプーの香りが俊の周りを包み込む。

いつも自分が使うシャンプーの香りのはずなのに、なぜ、こうも違うんだろう・・・

甘くて、さわやかで・・・そしてどこか少し色っぽくて・・・

女に興味がないだなんてのたまっていた自分が

ただのフツウの男だったと言うことを嫌というほど思い知らされる。

本人は特にそうしようとしてしているわけではない。

いや、むしろ、

蘭世の中にいるもう一人の蘭世が、まるで知らず知らずのうちに

俊に魔法をかけてしまっているような、自分が彼女の魔法に落ちてしまっているような

そんな気さえしてくる。





女が持つ、男を惑わせる魔法―――。。。





以前ジムの先輩である小関がそんなことをニヤニヤしながら俊たちに説き伏せていた。



―――計算のない女が持つ魅力ほど危険なものはねえぞ―――



その時の俊には今ひとつよく理解できていなかったが、たぶん・・・

こういうことを言うんだろう。

目の前にして初めて気づく。

その危険に、自らが導いてきてしまったことを・・・。

俊に背を向けたその背中を、思わず抱きしめたくて仕方がない。





「うん、おいしい。そんなに冷めてないよ」

蘭世がそういってこちらを振り向き俊は思わずのけぞった。



(び、びっくりした・・・)



俊の若干引きつる顔がわかったのか、蘭世は「どうしたの?」と尋ねた。

「・・・どうもしねえ」

俊はどうにかいつものポーカーフェイスに戻すと、ソファーに戻って、自分の冷めたコーヒーを飲む。

「お前、その制服もドライアーあてたほうがいいんじゃねえか?」

「うーん・・・そうだねぇ。。。あ、でもいい。うちに帰ってからするし大丈夫」

「・・・そっか・・・」

「・・・あの〜」

「ん?」

「隣に・・・座っても・・・いい?」

「え゛っ!」

ギクッとしたが、蘭世は先ほどから立ち尽くしたままで、よくよく考えたら学校からずっと走りっぱなしの立ちっぱなしだったわけで。。。



「あ、あぁ・・・どうぞ」

そういって俊は少し横にずれて蘭世のスペースを確保する。

すると蘭世はエヘヘと笑ってコーヒーカップをテーブルに置くと俊のとなりにちょこんと座った。

シンと沈黙する中で音楽だけが流れている。

何かどうでもいいことを話そうとするが、何も思い浮かばなくて心臓だけが打ち響く。



「何か・・・」

「え?」

蘭世が話し出す声に反応して俊は蘭世を見る。

「何か信じられない・・・かな?」

そういって蘭世は恥ずかしそうに俯く。

目を離せない・・・。



「雨に打たれちゃって最悪〜って思ってたけど・・・なんか・・・真壁くん・・・

優しいな〜って・・・///エヘヘ ありがとう」

蘭世はちょっと顔を赤らめながら微笑む。

その笑顔に心臓が鷲づかみされたようにギュッと縮む。



「洗濯してあるっていってたけど、この服、真壁くんの匂いがするよ」

そういって蘭世は自分の体を愛おしそうに抱きしめる。

まるで自分がそうされているような錯覚を覚えて・・・



それは・・・お前・・・反則だろ!!!



ダ・・・メ・・・だ・・・・・・

俺はもうすっかりこいつの放つ魔法にはまってしまった・・・

せめてBGMをテレビにしておけば・・・もっと現実のままいられたかもしれないのに

運悪く?バラードで・・・





気がつけば蘭世の頬に俊は手をさし伸ばしていた。

魔法にかかっているのなら、いっそもうそれでいい。

俺はもう・・・・・



ドクン・・・ドクン・・・

ヤバイくらいに鼓動が鳴り響く。



蘭世のその大きな瞳を見つめるとユラユラと揺れていて、

吸い込まれるように俊はゆっくりと蘭世の顔に近づけていった。




二人の瞳がゆっくりと閉じていく。

そしてその瞬間―――――――・・・・・・

















ピンポーンとインターホンが透き通った音が二人の間を突き抜ける。

二人はお互いの鼻頭がついた状態で同時に目を見開く。



「ただいまーー!俊、ごめーん。遅くなっちゃって・・・あら?」

トタパタと廊下を歩く音が近づいてドアから華枝の顔がチラリとのぞいた。

蘭世はその瞬間にスタッと立ち上がり「ここここ、こんにちわ、お邪魔してます」と頭を下げた。

「あら〜江藤さんじゃない。こんにちわ」

「あ、あの!帰り道、すごい雨に当たっちゃって、ま、真壁くんがそれじゃ帰れないだろうからって

ふ、服を貸してくださって・・・」

あたふたと答える蘭世の横で俊はソファーの腕置きに体を倒れこませて、

大きな息で呼吸を整えている。



「あら、そうなの。へ〜え、俊もいいとこあるじゃない?」

そういって華枝は俊を何か含ませたような笑みで見た。

「でも、それ、俊の服でしょ?大きすぎるわよねぇ。私の服を貸してあげるわ。」

「い、いえ、そんな」

「お、お袋がもう帰ってると思ってつれてきたんだよ!そしたらいねえし、俺の貸すしかねえだろ!」

まだ顔の赤みがとれないまま俊が怒鳴る。

「はいはい。ごめんなさいね。さぁ江藤さん、こちらどうぞ」

そういって華枝は蘭世を奥のほうに引っ張っていった。





       ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





蘭世は華枝のブラウスとスカートを借りて、華枝が送っていってあげなさいなと順にいうのも丁重に止めて、

お礼と共に帰っていった。

蘭世が出て行くと俊は思わず「はぁーーー」と大きく息を吐き出した。

安堵した気持ちと、どこか残念に思う気持ちと・・・

複雑に入り乱れた感情が心の中を交錯する。

あれは夢を見ていたか、もしくは、そう本当に魔法にかかっていただけなのか

現実に引き戻されて、妙なそのギャップに俊は困惑する。

そしてもし母親があのとき帰ってきていなかったら・・・と思ったら

俊はぶるっと身震いした。



・・・キス・・・



だけで終わらせることができたかどうかさえも・・・自信がない。

そして、蘭世がドアを出て行く瞬間にチラリと合ったあの瞳が頭から離れない。

二人だけの秘密を共有しあったことを確認するようなあの瞳に

俊は今もなお心をつかまれたままだった。



「しゅーん?」

居間から自分を呼ぶ華枝の声に俊は我に返った。

「ごめんね?母さん、お邪魔しちゃったかしら?」

華枝がニコニコしながらからかう。



「バ・・・んなんじゃねえよ!」

「フフ、だってまさか江藤さんがいるなんて思わないし〜」

「だから!違うって!」

「でも、いいこと?ちゃんと責任取れるような行動なさいよ」

「あ?ああ・・・わかってる・・・っておい!違うっていってんだろ!!!」

息子をからかう母とそして母には知られたくない心の感情を必死で隠そうとする息子の小競り合いは

当人抜きでしばらくの間、続けられるのであった。









<END>





おまけあります☆








あとがき

いかがでしたでしょうか?
kauranの得意とする未遂ver.です(笑)
あのEDのイメージからは大きくかけ離れているし、
まったくエロくもないですが・・・
マントも出てこないし、もちろん裸も出てきませんでしたがが
一応、歌詞を重視したわけで。
そこを汲んでいただければと・・・^^;

というわけにもやっぱりいかないかと思いましたので
おまけ用意してます。

こういう悶々とする王子はkauは好きです。
蘭世ちゃんをもっと積極的に小悪魔的にとも思ったのですが
どうにも書けずに無意識な魅力ってヤツに走らせました。

楽しんでいただければ嬉しいですvv








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