想いが重なるとき
2
俊は腕にはめた時計をもう一度見た。
13時30分を指している。
(待ち合わせ1時って言ったよなぁー、あのヤロウ、遅刻か?)
腕組みをしなおしもう一度辺りをぐるりと見回す。
近くに来ている気配もない。
(しょうがねえなぁ。どうせ一本道だし途中で会うか・・・)
そう思って俊は江藤家の方向へ歩き出した。
(まさか病気?・・・・・・なら電話してくるだろうし・・・)
鳴らない・・・そしてつながりもしない携帯を握り締めて暗くなった思考を閉ざす。
(俺を待たすとはいい度胸してるじゃねえか。覚えてろよぉ)
チッと舌打ちをしてイラつく気持ちを抑えながら俊は蘭世の家に向かった。
「え?とっくに出かけた?」
俊は自分の耳を疑った。
「ええ・・・12時前には家を出たんだけど・・・」
椎羅が不可解な顔をして言った。
「12時前って・・・」
俊がまた腕の時計を見る。
時刻はもう2時近くになっている。蘭世が家を出てから2時間。
とっくに駅についていなければおかしい。
先ほどのいやな予感が再び走る。
「遅れちゃダメだからって・・・おかしいわね。すれ違ったわけでもなさそうだし・・・」
あごにほっそりした手を添えて椎羅も考え込む。
少し顔も青ざめ始めている。
俊は焦る気持ちを抑えて能力に集中し、じっと蘭世の気配を探った。
―――――いない・・・。
(どこ行きやがった・・・)
「どこか寄り道をしてるにしても遅すぎる。あんなに楽しそうにしていたんだ。
違う用事なんてこともないだろうし、それなら連絡してくるはずだ。
どこに行ったんだ?蘭世は・・・・・」
望里が眉間にしわを寄せて言った。
「俺、探してきます!戻ってきたら連絡ください!!」
そういって俊は江藤家のリビングを飛び出そうとした。
そのとき――――――!!!
「バァーーーーっ!!!」
「うわぁーーーーー」
「あーーーーってサンド!!お、おどかすな!」
望里と椎羅は抱き合いながら突然の訪問者に抗議した。
「すみません。どうも癖になっていてやめられませんので。あっ王子もお越しでしたか」
サンドは頭をぽりぽりと掻きながら答えた。
「何なんだ!急いでいるんだ!」
俊が苛立ちを隠せずに怒鳴った。
「サンド、ちょっと今取り込んでるんだ。急ぎじゃないなら今度にしてくれないか」
望里が言った。
「あ、いえ、実は蘭世様がですねぇ・・・」
サンドの言葉に皆が一斉に振り向く。
「え?」
「江藤がどうした!?」
「いえ、その蘭世様が・・・ご自宅がわからないというのでお連れしたのですが・・・・」
困惑した顔でサンドが言った。
「はぁ??」
皆がサンドの顔をきょとんとしながら声を合わせる。
そのサンドの背後から女性が一人顔を出した。
「お父さま、お母さま・・・・・・?」
「蘭世!!!」
「江藤!!!お前・・・」
その少女は足首まである白いドレスに身をつつみ足元ははだし。
ストレートだった長い髪はいつのまにか緩やかなウェーブがかけられていた。
「ここ?」
蘭世らしいその少女はサンドに尋ねた。
「はぁ・・・そうですが・・・ホントに覚えていらっしゃらないので・・・?」
「・・・・・・」
「蘭世!あなたどこ行ってたの?それにその格好・・・」
椎羅が蘭世に寄り添って尋ねる。
まるで・・・・妖精のような身なり・・・・・・
「どうしたって言うんだ。俊くんと出かけるんじゃなかったのか?」
望里も妙な違和感を覚えながらも蘭世の側に駆け寄り言った。
「シュン・・・?」
蘭世はチラッと辺りを見回し俊を見つけた。
「あ!王子!なぜこんなところに・・・?」
(はあ?王子だぁ?)
「お前・・・・本当に江藤か・・・?」
あまりにも雰囲気が違いすぎる。顔もスタイルも見かけは蘭世そのものだが
話し方、物腰がどうも違う。
俊はいぶかしげに蘭世を見た。
「エトウ・・・?」
蘭世は首をかしげた。
「私はランゼ。ランゼ・エトワールです。あなたは本当にシュン王子?」
「はぁ・・・?」
またもや皆が一斉に声を合わせて蘭世を見る。
「ここは・・・人間界ですわよね。どうして人間界なんかにお父様もお母様も、
まして王子までいらっしゃいますの?どうしてここが私の家ですの?」
蘭世の蘭世らしくない言葉に一同唖然としお互い顔を見あわせた。
驚きの連続に誰もが身動きをとれないまま立ち尽くしていた。
この娘は一体・・・そしていつもの蘭世は・・・??

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