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第4話 written by かる
そして、時は過ぎ・・・。
「姉さん。明日の事なんだけどさ・・・。」
と鈴世が蘭世の部屋のノックした 。
「カメラ取りにきたんだ、明日の結婚式のカメラマンでしょ。僕。」
とに っこり微笑む。
そう、明日はいよいよ蘭世の結婚式。
「あっ、まってね。デジカメ、デジカメっと・・・。」
と蘭世は部屋の中にある机の上のデジタルカメラを手に取ると
それを鈴世に手渡した。
「よろしく お願いします。」
と少し大袈裟に蘭世は深々と頭を下げ、笑った。
「結婚式の写真と今までの写真をアルバムにまとめるつもりなの。」
「お父さ んとお母さんにプレゼントするんだよね。」
「うん。今日も雑貨屋さんに行って、かわいいアルバム買ってきちゃった。」
と指差す蘭世の指先には、机の上に置かれた、真新しいアルバム。
飾り付けのシールやデコレーションもウェディングカラーだ。
「そのアルバム結構分厚いけど、そんなに二人っきりで撮った写真て今まであったの?」
「・・・それを言わないで・・・。」
「はは。そういえば姉さん、高校時代はともかく、中学時代の兄さんとの写真が一つもないって言ってたもんね。」
肩を落とす蘭世に鈴世は肩をポンとたたくと
「大丈夫。明日はしっか り撮って来てあげるよ。まかせてよ。」
と鈴世はウインク、にっこり笑った 。
「へへへ、ありがとう。」
「いよいよだね。」
鈴世は蘭世の部屋を見回した。
荷物はほとんど新居のほうに移して、もう着ない十代の頃の服などは
なるみにあげたりしたので、部屋は、ベットと机があるくらい。
かなりすっきりしていた。
蘭世が部屋を眺めながら、ふうとため息を吐く。
「どうしたの?」
「うん。今日でこのお部屋ともお別れなのかなと思うと・・ ・ちょっとね。」
「・・・二人でよくここで遊んだよね。」
「うん・・・。 」
「荷物はもう、ほとんどあっちなんだよね。」
「うん。あとはこの宝箱ぐらいかな。」
そう言って手に取ったのは、細かい細工のついたアクセサリーボックス。
蘭世 が昔から愛用している、箱だった。
「前々から気になってたんだけど、その宝箱、何が入っているの?」
「見てみる?」
「これが、真壁君から初めてもらったペンダント。
これが切れたから、真壁君に何か起こる事わかったんだよ。
それからこれはね・・・」
ふと、蘭世はアクセサリーボックスの角の方に入っている、
小さな紙包みに気が付いた。
「あれ・・・?これなんだっけ・・・。」
「どうしたの?」
「・・・昔、もらった物よ。すっかり忘れていたけど・・・。」
蘭世は小さな紙の包みを開いた。
出てきたのは、小さな黒い、親指の爪ほどの小さなチップ。
「これって・・・」
「鈴世、あなたの部屋のパソコン借りるわね!」
大急ぎで蘭世は鈴世の部屋へ。
そして、パソコンを立ち上げる。
小さな黒いチップ。
それは、小さな記憶メディアだった。
パソコンを立ち上げるとあわててその記憶メディアをパソコンに入れ、画面をクリックした。
「うそ・・・。」
画面には、中学生時代の俊と蘭世
二人の写真が画面いっぱいに映っていた。
まだ「恋」だとか「愛」だとかの本当の意味もわからずに
ただ、心が教えてくれる「好き」という気持ちに
純粋に動いていたあの頃が、写真を見ていると蘇ってくる。
ただ、ただ、
涙があふれて止まらなくなった。
鈴世は涙目になって画面を見ている蘭世の様子を部屋のドアから見ていた。
「・・・姉さん。よかったね。」 と微笑んで、そっとドアを閉めた。
事の顛末はこうだ。
あれは、今から一ヶ月前。
結婚をまじかに控えた俊は、ジョルジュの家に招待された。
結婚を控えた花婿を男達だけでお祝いをするという、魔界の風習。
まあ、それを名目にただの飲み会ではあったのだけど・・・。
「蘭世ちゃんをいよいよひとりじめかあ。」
会もお開きという時。
別れ際、アロンの発した言葉に
振り向いて、俊は「ふっ」と微笑んだ。
その幸せそうな笑顔は、
どうやら野郎どもの「やっかみスイッチ」をオンにしてしまったらしく・・・。
「・・・今の笑顔見ました?」
とジョルジュ。
「見た見た。なんかすっごく感じ悪い。」
とアロン。
「『うらやましいだろ』って感じの笑顔でしたよね 。」
「いや、「お前らには一生無理だね』って笑顔だよ。」
野郎どもの「ふっ」の笑顔のアテレコ大会は徐々にエスカレートしていって・・・。
「これは、お仕置きが必要だね。」 とアロンがにやりと笑って言った。
酔った勢いも手伝って、秘密結社が結成された。
メンバーはアロン、ジョルジ ュ、鈴世などなどメンバーは一人、一人と増えていった。
お仕置きといっても 、能力に勝る俊に勝てる者はいない、
計画がばれて、逆にやられるのがオチだ。
ならばと、鈴世が、まだ能力がない中学時代に行くのはどうだろうと案を出した。
真壁君には、お仕置きとちょっとした悪戯を、
そして蘭世には前から欲しがっていた中学時代の二人の写真をプレゼントするために
秘密結社のメンバーは、魔界の過去への扉を使って
中学時代の二人の元に行った
というのが事の真相・・・。
え?あの教育実習生は誰かって?
それはね・・・。
「真壁、おめでとう。いい結婚式だったな。」
「筒井・・・。」
結婚式当日。
花嫁は友人との談笑中。
それを後ろで眺めていた花婿に筒井が声をかけた。
「あのインチキ教師、お前だったんだな。」
風に吹かれ、花嫁の白いドレスが風に揺れるのを二人眺めながら
俊がぽつりと呟いた。
「なかなか名演技だっただろ。」
「オスカー俳優も真っ青だよ。」
と俊は苦笑い。
「へんな写真撮りやがって・・・。」
「あれ、見た?見た?お前が気絶して、蘭世ちゃんの膝枕されてる写真。
ベストショットだよな♪」
嬉しそうな筒井を横目に、俊がふうとため息を吐く。
「あいつらもあいつらだ、みんなで結託しやがって。」
「みんな大好きで、たまんないんだよ。・・・大好きだから・・・幸せになってもらいたいんだよ。」
「・・・昔から、あいつはなぜか、もてるからなあ。」
俊が両腕をすっと上にのばし、頭の上で手を組むと、ふうとため息をつきながら青空を見上げた。
「なにいってんだよ、お前の事もだよ。」
はあ?と俊の顔 。
「みんな、お前ことが好きで好きでたまんないんだよ。」
「・・・・・ ・。」
「もちろん、俺もだけど♪」
「いらん。」
「冷たいな〜。」
「まったく・・・、あの教師、今度会ったらぜったい殴ってやると思ってたけど ・・・。」
俊は拳を筒井の頭にコチンと当て
「あいつが喜んでたから、許す。」
と妙に偉そうに言ったのがツボに入って
筒井は笑いが止まらなかった。
そんな二人に、蘭世が気が付いて、こちらに振り向いた。
澄み渡る青い空に
彼女の笑顔と白いドレスが風に揺れて眩しくて。
二人顔を見合わせ、くすりと笑った。
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